エピローグ『能天気とのうてんき』

 「まったく、君ってば、こんなことになっちゃって」

 瓦礫の上、閻魔は足を組んで座っていた。

 目の前には、男の姿があった。

「オレが あんなに頑張ってやったのに、この仕打ち。ほんと やる気なくすよお」

 閻魔は「ま、いいけど」と肩を すくめた。「それよりも」

「オレってば、悔しいけど君のおかげで面白いことに気がついたんだよお。聞きたい? 聞きたい? 」

 閻魔は耳を澄ませるポーズをして男へ向いた。が、すぐに唇を尖らせ、ぷいと他所を向いた。

「興味ないってんなら言ってやんなあい! せっかく いいこと言ってやろうと思ってたのになあ。え? 嫌だ嫌だ、もう言わないから! 」

 と言って、閻魔は晴れた空に視線を移した。こんな空、気持ちが悪くなるほど見てきたはずなのに、何度見ても心が揺れる。

「そろそろ死神様が来られる」

 閻魔は静かな声で言う。

「お前の魂が どちらに振り分けられるか、それは閻魔大王様の判断次第だ」

 けどさあ。閻魔は、お茶らけた表情に戻る。

「オレ的には地獄に落ちて欲しいけどねえ! リク君を裏切ったし、なによりパック君を悲しませた! オレが あそこまでサポートしてやったのにも関わらず! 」

 閻魔は目の前の男に あかんべーをする。そして「え? 何? 」と耳を澄ませる。

「暇だったからオレと話せて よかった? まったく君ってば能天気だねえ! そう言われたことない? 」

 閻魔が指を差す。

男は答えなかった。



                                     【完】

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