第41話 援助
なんとかルミレトからの尋問を抜け出した私たちは、物資を持ち、冒険者たちを連れてルネクが待つ野営に戻った。
私としては数十分に感じられたルミレトとの邂逅も、実際には数分程度だったので他の冒険者に怪しまれることもなく帰れた。
街を魔物から守れればそれで良いと思っていたが、つい今し方、私は自分が国家の反逆者であることを知ってしまった。
まさか魔物と一緒にいるだけで死刑になるとはね。
ルミレトの言い方からしても、この不文律はこの国のみならず、世界中の常識らしい。
これは面倒なことになったな。
リーシュと一緒にいる限り、私はずっと逃亡中の死刑囚となるわけなのだから、到底気が休まる気がしない。
でも、そのせいでリーシュと離れ離れになったら気が休まるどころか一生病むだろうから、今の私の決断が間違っていたとも思えない。
とにかく、ルミレトを説得できた以上、少なくとも今は大丈夫だ。
……でも、この邪災が終わったらそそくさとどこか別の国にでも逃げたほうがいいかもしれない。少なくとも、国の上層部にいるであろうルミレト・ローゼリアに知られてしまったのだし。
今後の展望のことも頭に入れつつ、私はその場で隣に立つリーシュの頭を軽く撫でた。
「……?…………♪」
特に何も言わなかったけど、嬉しそうにしてる。
その表情が見れるだけで、この子と一緒にいられてよかったと思った。
♦︎♦︎♦︎
その日の夜、私たちは一度街に戻っていた。
クレイが言っていた集会とやらをちょっと覗きに行くためだ。
本来はそんな勝手は許されないかもしれないが、私たちはもともと援軍に含まれていなかったし、昼間活躍したこともあってルネクに許可を得て来た次第だ。
まあ、私たちがいなくても、魔物の侵食は十分止められているし、そんなに仕事に追われていても仕方がない。
それに、ヴィッツテリア帝国から援軍が来たみたいな話も聞くし、そこらへんもちょっと気になる。
街に着くと、中心部の広場には人が集まり、そこには冒険者や剣士、魔術師、それから一般の民衆などもいて、ざわざわと話し合う声が聞こえる。流石に祭りみたいに楽しい雰囲気ではないけど、今にも死にそうな暗い喧騒な感じでもない。
私とリーシュもその人混みに入って何が始まるのかとしばらく待っていると、やがて真ん中の方にいた人たちが外側へと移動していき、広場の中心点から円を作るように囲んでいった。
そして、そこに一人の男が現れる。
男は武装しており、真っ白と控えめな金の線が入ったコート状の服装と、細く長い剣を納めた鞘を腰から垂らす、いかにも騎士って感じの男だった。
離れていて顔立ちはよく見えないが、30代くらいのまだ若い男だ。それでいて、とてつもない威圧感とプレッシャーを放っており、人々は萎縮したような彼よ発言を待つ。
「冒険者、並びに剣士魔術師の諸君、良くぞ集まってくれた。私の名はルタ・レストフレイ。この邪災対策の総括者として女王から命を預かった者だ。」
イメージよりも低い声でルタ・レストフレイと名乗る音が声を伝えると、囲んでいた冒険者たちはどよめきだった。
「……有名な人なのかな。」
無論私は知らないが、彼の発言からして、レストフレイさんはこの援軍を取りまとめられるほどの権利を持てる人なのだろう。つまり、有名かつ実力者である可能性が高い。現に、彼が放つ常態の威圧はかなりのものを感じる。
「あの人はこの国で最強格と言われている聖騎士ですよ。ついでに僕たちの師匠でもあります。」
何も知らない私とリーシュに補足をしてくれたのは、いつのまにか隣に立っていたクレイだ。
「クレイ、いたんだ。」
「はい。レイナさんたちもご無事で何よりです。」
はは……。
まあ無事ですまないようなこともあったけどね。
「クレイとラグドが前に話してた師匠って、あの人のことだったんだ。」
「ええ。あの人は、戦闘面で見ればこの国で三番の指に入るであろう根っからの剣士です。聖騎士は強さの象徴でもありますが、あの人の場合はその中でもかなり突出していると言って良いでしょう。」
「へぇ………。」
どうりで強そうだと思ったわけだ。クレイたちの師匠ってことは信頼しても良さそうかな。
会場のざわめきが収まると、レストフレイは続けた。
「さて。諸君らも知っての通り、この邪災騒動は一向に集結の兆しを見せていない。主な原因は、根源とされる魂玉が発見されないことであり、我々としては今後も捜索範囲を広げていくつもりだ。皆には迷惑をかけるが、どうか国のために力を尽くしてほしい。」
レストフレイの言葉は、その重厚感とは別物に、兵たちの指揮を保つためのものだった。
邪災の被害は援軍が来る前までと比べると格段に減ったが、それでも多くの戦闘職の人々が手を追われていることには違いない。今回の集会は、いわばそのアフターケアの一つなのかもしれない。私の過去の職場にそんなものはなかったから真意は知らないが。
「とはいえ、これ以上手を回すことに不満を持つ者もいるだろうし、実際問題、兵をこれ以上動員することは難しい。そこで今回、隣国であるヴィッツテリア帝国から援助として協力軍を派遣してもらえることになった。」
そして私が予想していた話題が上がった。
数日前に街で見たヴィッツテリアの兵士たちはやはり援軍であったか。
レストフレイはあくまで冷静に言葉を紡ぎ続けたが、それを聞いている聴衆は再びざわめきだった。
主にこの街の民衆からのものだった。
この街はヴィッツテリア帝国との貿易問題で苦しめられてきた過去がある。そのため、その国からの派兵ということで複雑な感情が混ざり合っているのだろう。
流石にこれだけの剣士たちの手前、大声だ不満を叫ぶものはいなかったが、少しはら場の空気は澱んだ気がする。
「既に先行隊がこの街に訪れているが、後日、総勢1000人の本隊が到着するとのこと。今回の邪災騒動の解決に大きく貢献してくれるだろう。」
その言葉を聞いて、怪しがる民衆たちの一方で、冒険者たちはどちらかというと肯定的に捉えているようだった。まあ、早く邪災が片付くならそれに越したことはない。
ヴィッツテリア帝国とは関係は良くないとはいえ、援助の申し入れを断れるほど余裕があるわけではない。
私はほとんどヴィッツテリア帝国の兵士のことは知らないけど、フォーリトーレムの聖騎士であるレストフレイが受け入れたってことは少なくとも悪い奴らではないはずだ。
「今回、それに関して、代表としてヴィッツテリア帝国将軍に来訪していただいた。諸君、静まり彼らの声を聞いてほしい。」
そう言ったレストフレイは、横を向いて小さく合図をした。
すると、そこから道が開け、一人の青年、二人の少女が出てきた。
彼らこそがヴィッツテリア帝国の将軍であり、今回の援軍の指揮官でもある存在だった。
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