第10話 Day 3
Day 3 2:26 a.m. 物音でココは目を覚ました。
燭台を片手に暗がりの階段を降りる。足音を殺して店を覗いた。息を飲む。
黒づくめの大男たちが棚を荒らしていた。ガスマスクを装着しており、人相まではわからない。
遺品は床に落ち、踏みつけられ、泥で汚れていた。ココが修理した機械だけが無事のようである。
ココは燭台を頭上に掲げ、不届き者に挨拶した。
「ミスター、感心しませんね。営業時間外です。速やかにお帰りください」
物盗りならば慣れている。ココがひとりで暮らしていると知って、盗みに入る下劣な暴漢はあとを絶たない。毎回、返り討ちにしてやるが。
気になるのは、男たちが、今までの泥棒とは違う様子であること。
物音を立てて、押し入ったことを隠そうともしない。レジスターや、金目のものには目もくれない。
なにかがおかしいと、ココの第六感が告げている。
「──おまえの父親の“最後の仕事”を渡せ」
男のひとりが声を圧し殺す。背後を取られて、ココの首筋にナイフが突きつけられた。
マリオンの“最後の仕事”……全自動機械操縦人形を探しているのか?
慰霊碑製作計画を語る使者といい、奇妙な出来事ばかり起こる。
「マリオンはここで暮らしていません。作品は残っていませんよ」
アンゲルスでは人形製作をしていない。
港町のあばら屋には作品が残っていたかもしれないが、すでに取り壊されているだろう。
男が獣のような唸り声を上げた。
「四の五の言わずにとっとと出せ! この店にあるのはわかっているんだ。隠匿すれば生命はないぞ! 昼間のうちにおとなしく渡していればいいものを……電力密売の件は押さえているんだからな! おまえたち全員、牢屋にぶちこんでやる!」
ココの眼差しがきゅっと鋭くなる。
やはり、昨日の訪問者と無関係ではないらしい。慰霊碑や救済金うんぬんの他に目的があったのだろう。
餌で釣って、隙を作ろうとしたのか。この男たちが排除すべき敵であることは、間違いなさそうだ。
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