第99話

効果音がつきそうな笑みを浮かべる秋に、高木さんはぺこりと頭を下げた。


「宮村さん。お話し中すみませんでした」


「いえいえ」


「まま…」


「ここにいるよ」


美憂が時々目を開けて、私がいることを確認するとまた安心したように眠る。


夢と現実を行ったり来たりする美憂を抱え直す。


「では、若葉さん。また」


「はい。お迎えありがとうございました」


あ、ネクタイが曲がってる。


高木さんも仕事終わりの格好で、黒に近い紺色のスーツを着こなしている。


片手でサッとネクタイの位置を戻してあげると、みるみる内に頬が赤く染まっていった。


「高木さん、大丈……」


「大丈夫ですっ!ありがとうございました」


楓君を落とさないようにしっかり抱っこして、慌てて走って帰ってしまった。


「?どうしたんだろう」


「詩由」


「ごめんね秋。ちょっとだけ美憂抱っこできる?」


「え」

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