第98話

「さっきの男は?」


「さっきの男って…」


あぁ、高木さんのことかな。


高木さんは奥さんと離婚していて、今は男手一つで楓君を育てている。


親しくなって身の内を話してくれた。


浪費癖と男癖が悪く、僕じゃ頼りになれなかったと呟いた。


美憂と私が歳の離れた姉妹ということは伝えた。


その他は何も言っていない。


言えるはずない。


「さっきの男の人は……」


「あの……」


引き戸から顔だけ覗かせて、高木さんは私と秋を交互に見た。


「ごめんなさい、お話し中に」


「いえ!あ、もうこんな時間なんですね」


「はい。楓も寝てしまって、美憂ちゃんも」


二人を軽々と抱えて、私の隣に立った。


子供とはいえ二人抱えれば重たいはずなのに、力持ちだ。


「長々と休ませて貰ってすみません。えっと…」


美憂を高木さんの腕から抱き上げる。


「宮村です」

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