第96話

美憂はぐりぐりと頭を首元に押し付けた。


後ろから高木さんが楓君を抱っこして走ってきている。


「はぁっ、はぁっ、お疲れ様です…」


肩で大きく息をしながら楓君を下ろすと、真っ直ぐに私の元へやって来て足を掴んだ。


「また美憂が勝手に走っていきましたか?」


「あ、いや、僕も手をすぐに離せるぐらいの力で握ってしまっていたので…」


「後でしっかり叱っておきます」


美憂はニコニコとしたまま、反省はしていなさそう。


私は小さく溜め息をついた。


「いえいえそんな。途中まではきちんと手を繋いでいたんですが、「ママ見えた!」って言って、その瞬間だったので」


「本当にごめんなさい。中で少し休んでください」


「おやつ…」


「ちゃんとあるよ。美憂とおてて洗って食べてね」


頭を撫でてあげると、美憂と共に走って中へと入っていった。


高木さんもその後ろに続く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る