第45話

安堵して、膝から崩れ落ちた。


柔らかい頬を突くと、キャッキャッと楽しそうに笑う。


「ごめんね、ごめん」


目に浮かぶ涙を拭って、私は美憂を抱こうとしたが手が止まった。


お酒臭い。


お酒の匂いぐらい大丈夫かもしれないが、やっぱり心配だ。


「グスッ…ごめん、お風呂入ってくる。その前にミルク作ってくるね」


頭を撫でて立ち上がりかけた時だった。


「ま、まぁ」


「え?」


今ママって言った?


パクパクと口を開いて、言葉を発したそうにしている。


思うように声が出せずに、時折眉を寄せた。


「ママじゃなくてお姉ちゃんね」


口の端の涎を前掛けでサッと拭いて、私は美憂に背を向けた。


嬉しかった。


まぐれでも初めて話してくれた。


ポカポカする胸を押さえて、私はやっと自然に笑えた気がした。

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