第43話
無言の鉄槌を喰らった花奏君は涙目のまま大人しくなり、春はまた私に顔を向ける。
「ほら、さっさと行った」
「ごめんっ、先行くね」
「転ぶなよ〜」
テーブルにお金を置いて、私は外へ走った。
後ろから店員さんの元気な挨拶が聞こえたが、それに構わず寒空の下へと駆けた。
ーーー
「本当に世話が焼けるんだから……あ!」
慌ただしく帰ったちゅうを見送った後、カバンの中にラッピングされた小さな箱を取り出した。
「プレゼント渡すの忘れてたわ」
「あ、俺もだ」
早川もゴソゴソとカバンを漁って、プレゼントを出す。
「ていうかちゅう、三日後誕生日なの絶対気付いてないわね」
「だな。自分の事は無頓着だからなぁ。俺らの誕生日はしっかり覚えてるのに」
早川のプレゼントは少し大きいらしい。
私はそれに少しムッとする。
「何渡すのよ」
「ふふん、今回は俺の勝ちだぞ井川。ちゅうのハートはこの俺がもらったぜ」
「うっさいわね」
「この勝負いつも引き分けだからな」
「プレゼント渡すだけで、ちゅうのリアクション対決してるなんて知る由も無いでしょうよ。まぁ、私のが喜ばれるに決まってるけど」
カバンにそっと戻して、また酒を煽った。
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