丘の上の一軒家

「言うまでもなく」

「あの鬼に心などと定義されているものはないさ」

「人間同士のやり取りを注意深く観察して、どのような振る舞い、発言が、運びたい展開へ有用なのかを知っているという、それだけの話しに過ぎない」

「そうしてしまうから、そうするのではないのだ。笑いたいから笑うのではなくて、相手を懐柔するために有効だから微笑むのだ」

「お伽噺には、本当は怪物も心を持っていて、大切な人との交流により花開かせる美談もある。だが、殊あのバケモノに限ってそれはあり得ない」

「あると信じるのは自由だが、無いものは無いのだよ」

「しかし、それによって何も不都合は無い」

「なぜなら、アレは人の営みに身を置く限り、人に擬態して暮らす類のものだから」

「結果だけを見れば、概ね人と変わるまい」

「……そう、概ねは」

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