人付き合いとコミュニケーションの話 国際版

松井造

#1 カップルがまとう雰囲気の不思議

秋は人恋しい季節。

北米では進学年度スタートの季節。


キャンパスが人で溢れかえり、大学なんかは教科書を売っている本屋のレジが長蛇の列でうんざりすることも。


9月は、新学期のリズムに慣れるまで少しあくせくするけれど

10月にもなると、だいぶ生活に馴染み、あわただしさが無くなった分、

ふと、「あれ?」と恋しくなる。

やたら、人恋しくなる。

直球で言うと、彼氏が欲しくなる。個人的な感想。


私は、今、カナダのモントリオールにある学校で日本語教師をしているのだが

私の教える日本語コースの新しい学期が9月から始まった。


7週間コースなので、2か月ごとに新しい生徒を迎えるのだが

今学期は、生徒8名のうち、カップル3組というおもしろい偶然?が重なったクラス。

そして、今学期は、初の対面授業。


私は、対面授業が好きだ。

対面ならではの、人が織りなす空気感がある。

そこにいる人たちで出来上がる気分や感情がその場の空気を作る。

その空気を読み取って、質問や疑問をいち早く察知することもできれば

自らおどけたりチョケたりして、空気を軽くすることもできる。


教師をしていると、そういった空気に敏感になるのかもしれない。


私のクラスにいるカップル3組。

なんとなく醸し出す二人の空気があって、

『ははーん、この人たち、付き合ってるな』

とどの組も思わせるものがあった。


まず、カップルは身体的な距離感が近い。

いちゃいちゃしていなくても、パーソナルスペースが非常に近い。

お互いに許している距離感が近いせいだろう。


そして、カップル間は会話する数も圧倒的に多い。

信頼を置いていること、親密であることが、ひそひそ話の多さから分かる。


そして、授業や宿題で作文させたときに、登場人物としてお互いの名が挙がることが多い。笑

それだけ、意識下にある人物だということですね。


不思議だな、と思うのは

やっぱりどの組も、なんとなく雰囲気が似ていること。


まとう空気感、というのかな。

話すリズムや間合い、顔の表情の作り方、姿勢なんかが似ている気がする。


1組は、フランス人カップル。

どちらも細身でスタイルが良く、顔つきも面長でシャープな形をしている。

そして、知的であること、語学に長けていることが、授業への参加の仕方、質問の内容で分かる。

頭の回転が速いカップルだ。


2組目のカップルは、フランス人とラテン系フランス語話者のカップル。

どちらも小柄で丸みを帯びた体系で、笑うと目尻が大きく垂れて柔和な顔つきになる。

ゆっくりおっとりしているようで、ちょっとうっかりさん。深く物事を考えていて、思慮深いのであろう、優しい人なのだろうということが伺える。

ほのぼのした雰囲気のカップルだ。


そして、もう一組は、モントリオール人同士のカップル。

中肉中背だけれど、骨ばった印象のある体系。どちらも色が白く、趣味からもインドア派なことが伺える。一見クールな印象を受けるが、シャイなことの裏返しで、慣れると発話が増え、反応してくれるところが似ている。

内気で cozyコージー な雰囲気のカップルだ。


・・・ただ、このカップルは、力関係が対等ではないんじゃないかな?と憶測してしまったりもする。

他の2組がより成熟した年齢層で、関係性が対等に見えたのに対し、

この組は比較的若く、どことなく、どちらかがお世話をしているような立場に見えてしまうから、そう思ったのかもしれない。

〔個人の勝手な憶測・印象であり、事実関係はわかりません!〕


もちろん、こんないらんことを考えていながらも

しっかり授業はしています。(笑)


というか、意識的に考えているのは授業のことだけれど、

こういったカップルの空気だとか雰囲気だとかいうものは、

勝手に感じていることだから、制御できるものではないというか。


しかし、大人になってもカップルで学び続けられるなんて、素敵だなーと。

しかも、趣味で同じ外国語を勉強し合っているなんて。

そして、どの組もカップルで日本に旅行にも行っている。

うち、2組はダブルデートで日本に行っていた!!

すげー熱量のかけよう。


人間というのは、

こうしていろいろな情報を無意識のうちに感じ取っているんだなぁ、

と改めて思ったと同時に、


カップルの雰囲気が似るっておもしろいな、と

つくづく思ったのでした。


追伸

ちなみに、素敵だなと思うカップルは、男性が女性を大切にしているんだな、大好きなんだな、ということが見えるカップル。

そういうカップルは、大抵、男性が女性に見せる笑顔がとても穏やかで優しく、慈しみに溢れた表情をしている。そして、彼女以外眼中にない顔をしている。

こういう表情が読めるようになった私は、それなりに経験を積んだんだなぁ、とちょっとしみじみ。

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