第24話

赤い火の海が、山のすべてを瞬く間に変えていく。


木が樹々になり、様々な芽が息吹き、山を形成するまで気が遠くなる時間ときがかかる。


それが一瞬でこうなるものか…


ワタシはまぶたを閉じ、しばし視界を休めた。


もう、

見たくはなかったのだろう。


瞼でさえぎられた視界はまっ暗ではなく、えんじ色をしていた。


その時ワタシは思い出した。


たくさんの火の粉が舞い、バチバチッとはじけるような音に恐怖心を感じたワタシは一目散いちもくさんに走って逃げ出した。

その途中の川を渡るさいに、岩で後ろ足を負傷したのだ。


前のワタシは、この森の中に住んでいた野生動物。


そうだ、ワタシはここが住処すみかだった。


山ノ神のあのホコラの周りでよく遊んでいた。


痛む後ろ足をひきずりながら、走ったが、神様の家が見えた辺りでワタシは……


記憶がそこまでしかない。

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