【PV10万感謝!】戦火は金色の追憶と白銀の剣のうちに

井熊蒼斗🧸異世界冒険ランキング最高38位

プロローグ:戦争は遠い過去の叢となって

 龍神がいた。

 龍神は全てを創り出した。

 産まれ落ちた全ての生物を、我が子とし。

 その胸に秘めたる愛と誓約を。

 遥かなる高みから守っていた。


 神がいた。

 その神は二柱だった。

 異界から現れ、龍神を神座から追い落として。

 世界に相反する異なる力と共に。

 天と地と冥府に、新たな風を吹き込んだ。


 男がいた。

 彼は剣を奮った。

 迫り来る数多の敵を、その手で屠り。

 屍の上に屍を累ね。

 新たな芽吹きの糧となった。


 男がいた。

 彼は龍神と友となり、世界を繋いだ。

 言葉、文化、思想、技術の全てをその手の内にし。

 新たな発展と交流を産み。

 永く続く戦なき世を齎した。


 生きる者たちよ。

 全ての者は友である。

 友を愛せ。

 互いに啀み合うなかれ。

 憎しみを負うなかれ。







 ………………

 …………

 ……





 歴史の書の序文。

 民衆は偉大な祖王の詞を、伝統的に幼い頃から暗記するものとして課されていた。


 祖王は辺境の地に産まれた。

 彼は龍神の力を借り受け、剣妃、法妃と呼ばれる二人の妃を始めとした様々な種族からなる仲間たちと共に惑星を統一した。


 今は祖王の時代から遥かなる月日が経って、学習というものは情報を脳にインストールする形式になる程に技術は大幅に進歩している。

 けれども、この序文だけは口を動かして覚えることが伝統となっていた。


「か、つ、て……」


 読み書きを覚えたての少女は、その手を握る母親と一緒に、拙い舌っ足らずの声でゆっくりと文字を追う。


 麦畑に差し込む金色の光が、その親子にも慈愛の眼差しを向けていた。





 その陽光を浴びて、村の外れにある歪な形の大木は忘れていた過去───祖王アルウィン・ユスティニアの歩んだ道を思い出していた。



「ユスティニアの兵よ!叫べッ!己が胸に抱くものは何だ!?それは───龍神様への忠誠心であろう!」


 そう男が叫ぶと、数十万の兵は爆発のような歓声をあげる。


「龍神様の力を預かるこのオレが……この世界を変える!!これは最後の戦い、我々の命運を決める戦いだッ!!

 けれど、安心してくれッ!!皆の背には、常にこのアルウィン・ユスティニアがついているぞッ!!」


「「「我らが王よッ!!

 龍神様の代理人よッ!!」」」


 またも、兵士たちから湧き上がる歓声。

 興奮は最高潮に達していた。

 そんななかで。


「出陣だッ!!」


 叫びながら白銀に煌めく剣を掲げる男。

 限りなく高い士気のまま、兵士たちは進んでいく……



 そんな光景を大樹は思い浮かべていた。

 時が反転する。

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