いい夫婦の日?

「ねぇあらた、今日いい夫婦の日なんだって」

「へぇ、なんでいい夫婦?」


 新と呼んだ私の幼なじみは、ベッドでダラダラとスマホを眺めながらあまり興味が無さそうに、でも無視するわけにもいかないのか、思ってもなさそうなことを口にする。


「ほら、11月22日でいい11ふう22、ただの語呂合わせだよ」

「ふぅん。でも俺らには関係なくね? 親も離婚してるし、互いに片親じゃん」


 新は察しが悪い。今すぐその何も詰まってなさそうな頭をひっぱたきたくなる。いや、これくらいなら分からなくても仕方ないか。でもやっぱりひっぱたきたい。


「じゃあ夫婦なろうよ」

「は? いや無理だろ。俺らまだ高校生だし。第一付き合ってすらないだろ」


 やっぱり新は察しが悪い。こんなこと、私に最後まで言わせないで欲しい。できることならいい感じに誘導して新の方から言わせたい。

 でもそれは叶いそうにもないから、後でお盆かなにかで叩きながらその空っぽな頭に私の気持ち全部詰め込んでやろうと思う。


「だから、将来夫婦になろうって言ってるの。なんで分かんないのよ、このバカ新」

「誰がバカだ ───え?」


 新の手によって宙に浮いていたスマホが、ぽすりと音もなくベッドの上に落ちた。

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