ペロ
宇宙書店
元夫の妄想
ゴロウが意識朦朧の中、寿命が尽きる迄に、自身の深層世界の中に取り急ぎ創造した、今回の舞台の小道具となる、“小道”の具体的な様相。
と或る大きな庭を持つ白い家。何やらゴロウは其処と縁が出来ては一匹の、大きな野良犬の死骸を掻っ攫って来ては、コノ何も無い世界に置いた。すると沢山の飢えた様々な種類の獣達が次々と何処からかやって来て、力の強い順番からソノ野良犬の肉や臓物を貪った。そしてアッと云う間に野良犬は骨だけに化けた。此の世界には方角など無く、シカシ如何しても必要だ..ゴロウは野良犬のアタマが向いた方向を“北”と定め、尻尾の方角を“南”とした。野良犬には人間と同じく背骨(頸椎、胸椎、腰椎の脊椎)が在って、人間同様に何本もの肋骨が、背骨から沿っては左右に伸びる。
「左側(西)の肋骨は今回残して置こう。右側(東)の肋骨は要らない。」
其の一切をブッタ斬ったゴロウ。余白が産まれたソノ右側(東)の空間、アタマが在る極北から尻尾の一番端っこの所まで、背骨に沿って一筋の水を垂らしたゴロウ。
野良犬のアタマには嘗て脳味噌が在った。そしてアタマの頭蓋骨と云う物には、広い空洞が中には在って、人間達が雨風も凌げる絶好の生活の基盤と化して、此処が栄えて大きな駅前商業施設と変化した。
其の駅前から始まる一本の背骨は、細長い一本の逞しい小道へと育ち、其々の左(西側)肋骨の周辺では、沢山の家屋が土壌から芽を出した。家屋からは沢山の赤ん坊も産まれる。
背骨に沿ってゴロウが撒いた一滴の水の線。川幅が三〇〇センチメートル程の美しい小川に成長を遂げて、兄様で在る小道に寄り添って静かに流れる。
———此処を舞台に今回の偶話は始まって行く。全てはゴロウの世界の中だ。
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