当たり前のお話
sui
当たり前のお話
声無き小鳥が居りました。
鳴けば敵に見つかるからと、こっそり隠れて生きていました。
綺麗な綺麗な羽を持ち、嘴を開けば独特の歌を奏でる。
けれども、それを知る生き物は居りません。
見つかれば死んでしまうかも知れないから。
小鳥はただただ生きるだけ。
小さい体を更に小さく小さくして、一日一日過ごすだけ。
鳴かない鳥が地に落ちました。
亡骸を見て哀れむ人が一握り。
けれども今更の話です。鳥は二度と戻りません。
亡骸を不快に思う人が大多数。
きっときっと正しいのでしょう。でももしかしたらば、その小鳥の生前を知ったのならば、受け取り方は異なっていたかも知れません。
けれども今更の話です。鳥は二度と戻りません。
鳴けば見つけてやったのに。
声を出さないから見つからないのだ。
知られる努力を怠るのが悪い。
仕方がない。
たかが小鳥だ、広い世界にはまだまだ鳥は存在する。
死んだのは自分ではないからどうでも良いさ。
さて、言った所で何になるのか。
亡骸を獣が啄みます。そうして小鳥は綺麗さっぱり無くなりました。
なんて自然で当たり前のお話。
鳴かない鳥が消えたあくる日。
喧しい鳥が撃たれました。
耳障りだと憎まれて、何で鳴いたか分からず仕舞いになりました。
その次の日は大きな鳥が消えました。
飢えた猫が食べ物を求めて爪を伸ばしたのだそうです。
その次の日は猫が消えて行きました。
大きな鳥を獲った時、目玉を突かれたのだとか。犬が死肉を咥えて行きます。
その次の日は犬が消えました。猫は病持ちでした。
その次の日は犬の飼い主が、その次の日には飼い主の子が、隣人が、隣人の育てていた果実の木が、順繰り順繰り消えて行きます。
皆皆、消えてさっぱりなくなります。
なんて当たり前で平等な世界。
当たり前のお話 sui @n-y-s-su
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