🎃Bloody Halloween👻
千織
第1話 金輪際ヤル気にたよらない人生!
今日はハロウィン。街のディスプレイはハロウィン一色。仮装した若者たちが溢れていた。
カクヨムで知り合った「チオリ@暴れコーギー」さんとの初めてのオフ会。会と言っても、もう一人来るはずの「名状しがたい神話の生物」さんが急遽来られなくて二人きりだ。
私は待ち合わせより30分早く着いたので、喫茶店で時間を潰していた。仮装してきてね、と言われたが、チキンハートな私ができる仮装はせいぜい不思議の国のアリス。コーギーさんは犬の着ぐるみで来るらしい。
コーヒーを飲みながら、さっき衝動買いをした『金輪際ヤル気にたよらない人生!』という本をめくる。
小説講座に出す新しいプロットができていない……。あんなに時間があるのに、私は一体何をしていたんだろう……。コーギーさんはとにかく作品数が多いし、名状さんは知識がすごい。自分がすぐそうなれないのはわかってるのに、ついつい動画を見たり目についたテンプレものを読んでしまって一日が終わっていく……。
今も執筆アプリの画面と睨めっこしていた。
――降って来い! 私の傑作!――
そう念じた。
「Sコさん」
「は! はい!」
急にユーザーネームを呼ばれて驚いた。見ると犬の被り物をした人が立っている。頭はリアルなコーギーだが、ハロウィン仕様なのか目の焦点が合っていない。服は犬の着ぐるみ……というか、パジャマみたいなやつだった。本来、犬の耳がついたフードを被るのだと思われる。
「もしかして、暴れコーギーさん?」
「はい、よろしくお願いします」
「こ、こちらこそ」
待ち合わせ時間よりだいぶ早く、しかも待ち合わせ場所でない喫茶店内で会ってしまうなんて。不意打ちをくらい、パニックになる。
「その本、面白いですか?」
コーギーさんが指を差しながら言う。
「え、あ、そうですね。私みたいにヤルヤル詐欺の人にはいいかも。ヤル気がない時とヤル気があってもやらない時にどうしたらいいか書いてるんで……」
自己啓発本を読んでいるところを見られたなんて恥ずかしい。物書きはみんな自分がしっかりしているように感じる。自分の感性、自分の世界が大切なのに、こんなのに頼っている自分なんて……やっぱり、向いていないんだろうか。
コーギーさんがいきなり本をつかんで、真ん中のページを開き、そのまま左右に引っ張った。
「え?! ちょっ……!!」
「ふんっ!!!」
コーギーさんの気合いの声とともに、本が真っ二つに裂けた。
「えええ?!」
新品の本が惜しい……とは案外思わず、コーギーさんの不可解な行動と怪力に素直に驚いた。
「書を捨てよ町へ出よ」
コーギーさんが言った。焦点が合っていないコーギーの目玉と、目が合ってしまった……。
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