第47話 レークの計画
コロシアムは熱気に包まれていた。
主に男子生徒からの声援を一身に受けて、俺は舞台へと立つ。
立ちはだかるように現れたウォルトンの表情は自信に溢れていた。
負けることなどまったく想定していないって感じだな。
その力も、本来はクレアから奪い取ったようなものなのに……それを自分自身の実力だと勘違いしている。
だが、逆に考えれば、ヤツの持つ力はクレアの持つものと同等ってことになる。
ウォルトン自身に怖さはないが、クレアが育てた魔草たちは脅威となり得るからな。
「それではただいまより決闘を始めますわ!」
トリシア生徒会長の掛け声とともに、学園の象徴とも呼べる時計塔の鐘が鳴り響く。
直後、コロシアム内はこれまで以上の歓声で揺れた。
「さて……まずは相手の出方をうかがうか」
ヤツには戦闘中の間、徹底的に煽りまくってボロを出させる。
もちろん、俺が聞いていたというだけでは信憑性に欠ける――なので、クレイグの時に使った録音機能付き水晶を用意していた。
ただ、以前と同じ代物だとすぐにバレてしまう。
以前から俺はルチーナに水晶を小型するよう依頼していた。
クレアとの騒動が始まる前に完成してくれていてよかったよ。
これでヤツの悪事をバッチリ記録できる。
残すは戦闘だが……こちらは魔銃を封印しているが、万が一の時に使用できるよう懐に忍ばせてはいた。
一方、ウォルトンはキザったらしく制服の胸ポケットに挿していた黄色い花を手にする。
「この一輪の花でおまえを倒してみせよう」
腹立たしいくらい格好をつけながら宣言した途端、女生徒たちの声援のボリュームが一層増した。
あの花……クレアが書庫の中庭で育てていたものだな。
形状はバラに似ている。
しかし、よくもまあ恥ずかしげもなくあんな風に高々と掲げられるものだ。
「【
花を宙に放り投げると、一瞬の閃光があり、それからすぐに激しい雷となって俺の方へと迫ってくる。
「悪いが……これで終わりじゃないぞ」
ウォルトンはさらにもう一輪の緑色をした花を取り出すと、同じように放り投げた。あれはアネモネに似ているな。
「目では捉えきれない【
風と雷の連携攻撃。
――見栄えはいい。
音も大きいし、威力も十分。
さすがはクレアの育てた魔草だな。
下手な魔法使いの放つ属性魔法よりずっと強力だ。
ますます彼女が欲しくなってきたよ。
「どうした! 怖気づいて足がすくんだか! ケンカを売る相手を間違えたと後悔したところでもう遅いんだよ!」
それにしてもよく喋るなぁ。
昔はここまで饒舌じゃなかったぞ。
クレアの魔草の影響でだいぶ強気になったようだな。
あの魔法だって派手で見栄えはいい――が、それだけだ。
使用者の実力がともなっていなければ、恐れることはない。
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