第11話 気になるあの子をダンスに誘った結果
次の日から学園は通常授業が始まる。
一年のうちは共通クラスで二年からそれぞれの専門クラスへと分かれるというのがこの学園のスタイルだ。
そのため、俺とコニーは教室で顔を合わせる機会がある。
おまけに彼女とは座席が隣同士という幸運。
お互いに平民という立場と昨日の件もあって会話もできたのだが……ひとつ問題点が。
「おはようございます、レーク様」
「ああ、おはよう、コニー」
まだまだコニーの態度がぎこちない。
もっとこう、くだけてもらって全然構わないのだが、一歩引いているというか遠慮している節がある。
やはり施設育ちというのが関係しているようだ。
ギャラード商会の力を駆使して集めた情報でそれは判明している。
彼女は孤児であり、王都の外れにある教会で育った。
しかし、幼い頃から人並み外れた魔力量を誇り、それを操ることに長けていた。
その才能は常人のそれを遥かに凌駕しているという。
何せ学園創設以来存在しているとされる「生い立ちが不透明な者の入学は問答無用で認めない」という暗黙の了解さえ捻じ曲げてしまうくらいだからな。
だが、時として才能豊かな人材はいらぬ恨みや妬みを集める。
絡んでいたあの男たちもそうだろう。
家柄は立派は、中身は一般平民と大差ないレベルってとこか。
まったく、器の小さい連中だ。
ともかく、そういう事情もあってコニーはクラスで浮いた存在となっていた。
俺以外の生徒と話している姿を見たことがない。
完全にボッチ状態だ。
かく言う俺も完全無欠のボッチだった。
自慢ではないが、これは前世と同じ。
ルチーナという話し相手がいてくれるだけ前世よりマシだが、彼女は彼女でいつものオーバーアクションと燃え滾る正義感でクラスにいるどの世話役よりも主張が激しく、周囲からも「あいつには近づかんとこ」とドン引きされているのが分かる。
勧誘しておいてなんだけど、あいつ味方に見せかけて実は敵なんじゃないか?
……まあ、別にいい。
あくまでも俺は俺のために働いてくれる者と将来のお得意様とだけ親しくできればいいのだから。
泣いてなんかいないぞ?
それはさておき……くくく、コニーに関しては好都合だ。
周りに信頼のおける人物がいないとなれば、こちらへ依存させやすくなる。
そろそろ計画を次の段階へと移すか。
◇◇◇
授業後。
ひとりで黙々と帰り支度をしているコニーに声をかける。
「このあと時間あるかな、コニー」
「えっ?」
いきなり声をかけられて驚きつつ、その相手が俺だと知るとコニーは途端に背筋をピンと伸ばす。
……やはり壁を感じるな。
「実はうちの秘書――いや、メイドが面白い魔道具を作っていてね」
「魔道具!?」
おぉ?
なんか思ったより食いつきいいな。
「ひょっとして、魔道具に興味が?」
「ふえっ!? あ、あの、その……はい」
さっきの反応を思い返して恥ずかしがっているのか、顔を真っ赤にしながら消え入りそうな声で肯定する。
別に恥ずかしいことでも、ましてや犯罪行為というわけじゃないんだから堂々としていればいいのに。
彼女の上流階級に接する際の態度は思ったよりも重症のようだな。
ただ、魔道具に関心があるというのはいい話の種になりそうだ。
「ならばぜひとも君に来てもらいたい」
「わ、私にですか?」
「実は今手掛けている魔道具なんだが、魔力に関わる詰めの段階で少し手間取っていてね。うちのルチーナはその手の情報に疎いから」
「レーク様以外に興味関心はありませんので」
「えぇ……」
おい!
忠誠心があるのはありがたいが、熱量が凄すぎてコニーが引いてるぞ!
「ちょっと黙っていてくれる?」
「はっ! 仰せのままに!」
とりあえずルチーナの口は塞いでおいて、話の続きをしよう。
「魔法に詳しい者からアドバイスを受けたいと思っていたんだが……どうかな? 君の力を貸してもらいたい」
俺の言葉を耳にしたコニーは最初こそキョトンとしていたが、すぐに顔を真っ赤にして俯いてしまった。
まずい。
さすがに直球すぎたか?
もう少し変化球を織り交ぜた方がよかったのかもしれない。
そう反省していたら、
「ど、どこまでお力になれるか分かりませんが、私にできることであればなんでも協力しますよ」
「っ! ありがとう。本当に助かるよ」
ついに大きく動いたな。
さあ、ここからが仕上げた。
なんとしても彼女を舞踏会へと誘うぞ。
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