夏なんです
ノーネーム
第1話 ホワイト・シガレット
久化元年。とある県の山奥に位置する阿波根町。その駅前にて。
「ここが阿波根町かぁ~…」
青年、塚原卜伝はひとり目元に手を当て、キツい夏の日差しをかろうじて遮った。
25歳の卜伝は、今日からここで「ある任務」に当たることになっていた。
「さて、歩いてくか…」
卜伝はひとり、携帯の地図を片手に町外れへと歩いて行く。
数十分後、およそ、町の果てと言える場所に来た。
その場所は、まだ整備されたばかりと見える、白いトンネルだった。
一切の塗装剝がれすらもなく、それがかえって不気味な雰囲気を醸し出していた。
人気のないトンネル内で、卜伝はトンネルの中間位置に立つと、
ふいに壁に手を置いた。さらっと手で撫で、表面の凹凸を確かめると、
「ここだ」
そう呟いて、ピタリと手を止めた。片手でポケットの中から銀色の鍵を取り出す。
そして、壁に鍵を差し込む。そして回した。
「解錠、解錠」
かすかに壁の内部からアナウンス音が聞こえると、ふいにガチャリ、と
扉が姿を現し、横に開いた。
中から、ひんやりとした冷気が漂ってくる。。
「さみぃなぁ…仕方ねぇ、仕事、仕事。」
卜伝は扉の内に分け入った。卜伝が完全に扉の内側に入った時、
扉は突然、大きな音を出して閉まった。
数秒後、あっという間に静寂に包まれる。
そこにはもう、ただの白いトンネルがあるだけだった。
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