いきなり、王家の人間だと言われても荷が重すぎるんですが

みくろぎ

第1話 私が王族とかありえません1

今日も、平凡な日常が始まる。そう思っていた。


喜四華きよかだよな。初めまして」


突然、現れたこの金髪碧眼の男性の出現によって……。



私は、白石喜四華。高校1年生。ごく普通の地味な女子高生だ。

運動も音痴だし勉強も中途半端。高校受験も親がなんとか見つけて入学できた。

この学園で平凡に過ごし文系の大学か短大に入学して図書館司書の資格を取得して大好きな本に囲まれて生きていくのが夢だ。


5時間目の授業が始まって暫くして突然校内放送が始まった。

「授業中に失礼します。これより、国家放送が始まります。教員は、授業を直ちに終了し接続の準備を行ってください」


国家放送か……。王位継承の話だろうか。王様も結構な歳なんだよね……。でも、王子様はご病気で亡くなられて王位継承について結構物議を醸しているのよね……。


『国民の皆さん、こんにちは。今日は、この国に関わる重大な発表をしたいと思います』


第123代国王の一二三様素敵。ロマンスグレイの髪に優しそうな顔。


『王位継承について、国民の皆様においては不安に感じていらっしゃる方も多いでしょう。SNSなどでは、根も葉もない情報を流している方が居るのも存じております。そこで、私の跡継ぎを決めようと思います。候補は、5人。最後に残った者が次の国王とします』


「すっげー!なんか、バトル漫画みたいだな」

「てか、5人も居るっけ?」

教室がざわめいている。私も同じ気持ちだ。少年漫画の展開に胸が高鳴る。

でも、確かに5人って……。えっと、亡くなられた王子様のご子息がお一人に、ご令嬢がお一人。それから、国王様の弟君のご子息がお一人。後は、遠縁の方とかかなぁ。


『その5人についてですが、今は公表しません。本人たちには通達が行くでしょう。詳細についてはまた。では、失礼いたします』


こうして、早々と国家放送は終了した。タイミングよく、授業終了のチャイムが鳴った。これで、帰れる。今日は、大好きなアニメの放送日だ。早く帰って宿題を終わらせよう。帰りの会も終了し足早に家へと向かった。


帰宅すると、見慣れない靴がある。お母さんに、お客さんかな?


「ただいま~」

私が、リビングの扉を開くとお母さんと金髪碧眼の男性が話していた。


「あっ。お客様。ごめんなさい」

私が、部屋を出ようとするとお母さんが静止した。


「喜四華。こっち来て」


私は、お母さんの隣に座った。目の前のイケメンがにっこりと笑う。思わず、下を向いてしまう。


「喜四華だよな。初めまして。俺は、紫石三宗しいしみつむねって言うんだ。喜四華とは遠縁になる。親戚の兄貴みたいな立ち位置かな。気軽にみつ兄って呼んでよくれよな」


お兄さんは、にこやかに笑っている。


「そ……そうなんですね」

こんなイケメンの親戚なんて居たの。直視できない。てか、うち親戚居ないってお母さん言ってじゃん。


「今日来た理由はこれを届けに来た」


お兄さんは、封筒を渡してきた。差出人を見ると国の印章で封がしてある。

なんとなく開けたくない。でも、2人の視線を感じる。恐る恐る封筒を開けると一枚の紙が入っていた。


『白石喜四華さま 王位継承選への参加を命ずる』


とだけ記載が有った。


「なっなに! これどういうこと!? ええ?」


「喜四華。あなたそんな声だせるのね」


とお母さんがのんきな声で言う。


「ははは」

お兄さんも爆笑している。


「つまり、俺と喜四華は王家の人間でこの王位継承選へ参加しろってこと」

お兄さんも同じ封筒を見せた。


「意味が分かりません」


王家って何。うちは、一般家庭でしょう……。てか、お母さん!!


「まぁ、そうだよな。俺も喜四華も王家の血筋って言っても凄い末端なんだよな。俺は、小さい頃から遠縁って聞いてたし親父も国王の仕事の手伝いしてるから王家と近いけど……喜四華は今知ったんだもんな」


「お母さん、どういうことなの!?」


「お母さんも詳しくは知らなくて……。お父さんとはできちゃった婚で妊娠中に事故で亡くなっちゃたでしょ。お父さん、親族の話しなかったから仲良くないのかなって思って聞かなかったのよ……」


確か、お母さんが怪我してたお父さんを助けてそのまま一緒に住み始めたって昔話していたけどそんな漫画みたいなことあるわけないでしょってスルーしてた。もう少し話聞いておけばよかった……。


「でも、不思議じゃなかったか? 親父さん、亡くなってこんな一軒家に住んで、お母さんもパート勤務だろ?」


「確かに……」

お母さんの方を見る。


「この家は、お父さんのお葬式の時に来てくださった方が用意してくれた家なのよ。これから、大変かもしれないしお父さんにはお世話になったからって……」


「その人に名前とか聞かなかったの?」


「うーん……。聞いたような気もするのだけど……思い出せないわ。正直、あの時、妊婦だったしお母さんには両親も親戚も居なくて途方に暮れていたからね……。でも、正直不思議よね……」


お母さん、のんきすぎない?てか、怪しすぎでしょ。それ……。


「みつ兄さん、他にも遠縁の方居ないんですか!?」


「居るかもしれねぇけど……。自分が、王家の人間だって分かったら割と王位就きたいやつとか居るんだよな。そういうやつは……まぁな……」


つまり、始末されたということですかね。お兄さん。

どうすんの……。いきなりこんなこと言われても……。私が黙っているとお母さんが悲鳴を上げた。


「あらやだ。パートの時間! ごめんなさい。行ってくるわ」


「ちょっ! お母さん、こういう時ぐらい休んでよ!」


「休めないわよ! 今日人少ないのよ!」


夜のパートさんが少ない日が偶にあり、深夜までお母さんは仕事に行くことがあるがまさかこんな日だなんて……。嵐のように、お母さんが出て行った。


「……。私、辞退します」


「そいつは、無理っぽいぜ。ほら、ここ!」

みつ兄さんが封書の最後一文を指さした。


「辞退は、認められない。辞退した場合は、その家族は死罪に値する」


「おっかなくないですか!?」


「だよな!でも、安心しろ。国王の爺ちゃんには、俺たちには分が悪すぎる。だから、俺と喜四華が協力することを認めてほしいって。無事、承諾を貰ったぜ」


お兄さんは、もう一枚書類を見せてきた。


『三宗は、喜四華を主とし仕えることを認める。ただし、三宗は王位継承選から外す』


「ちょっちょっと待ってください! みつ兄さん、強制辞退になってるじゃないですか!」


「まぁな。でも、俺国王とか、本気で興味ないんだ。正直、普通に暮らしてみたいって思う事もあるしな。あとは、俺の能力は戦闘向きじゃないんだよな」


「能力?」


「ああ。能力についても知らないよな。その前に……」

みつ兄さんは、立ち上がりタブレットを取り出した。何か作業をしている。

「大丈夫そうだな……」

何をしているんだろう……。


「この家、国王の爺ちゃんが俺の親父に手配した家なんだ。だから、盗聴器とかしかけられたりしてないか調べてみたけど何もないみたいだ。これから込み入った話をしようとい思ってな」


「盗聴器!? てか、お葬式に来たのはみつ兄さんのお父さんだったってことですか?」


「ああ。そして、俺の親父の能力は記憶を削除すること。だから、喜四華のお母さんは覚えていなかったんだ」


「能力!? 記憶の削除?」

理解が追い付かない。


「ああ。王家の人間には特別な超能力ってやつが生まれつきあるらしいんだ。俺の家系は代々記憶に関する能力を受け継いでいる。俺は、記憶を読み取る能力があるんだ」お兄さんは、そういうと机の上に置いてある花瓶に触れた。


「この花瓶、喜四華が小学校3年生の図工に時間に作成した花瓶なんだな」


「!?」

その通りだ。


「もっと、読み込めば色々な情報も読み取ることができるがこれすっごい能力消費するんだよな……。これが、超能力ってやつ。だから、喜四華にもその能力がある」


「いきなり、そんなこと言われても自分でもそんな能力あるとは思えません」

勉強もそこそこだし運動も苦手だし……。


「まぁ……。大体能力に目覚めるのは18歳ごろって説があるからな……」


18歳って……私まだ15歳ですよ……。


「ただ、強制的に目覚めさせることもできる。それがこの王家秘伝のお菓子だ!」


みつ兄さんは、駄菓子屋などでよく見かけるゼリー状のお菓子を取り出した。


「これ、よく駄菓子屋に売っている王様のゼリーじゃないですか。食べたことないですけど……」


「やっぱり、食べたことなかったか。これは、実は王族をあぶり出すお菓子なんだ。少しでも王家の血筋のやつが食べると不思議な能力が目覚めちまう。俺たちが知らないだけで実は王家の人間って居ることがあるんだよな。王族って言うもんは、血の繋がりが一番って意識が強くてね。自分の周囲に集めたがるんだよな。まぁ、消されるやつも居るんだけどね……」


王家って何気に怖くない。てか……


「さっき、みつ兄さんは戦闘向きの能力じゃないって言っていましたよね。そもそも戦闘って何ですか? そして、私も戦闘向きじゃなかったらどうするんですか!」


「戦闘って言うのは、俺がこの手紙から読んだ情報なんだ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る