罰ゲームで付き合っていたと言って振った彼女。俺が、えっちな美少女と付き合い始めた途端、手の平返ししてきた件

譲羽唯月

第1話 フラれた俺が、学園一の美少女と付き合えたわけ

「あんたとはただの遊びだっただけ」


 校舎の一室にいる岸本和樹きしもと/かずきはその時、真実を知った。


「で、でも……好きだって」


 放課後の空き教室内。その場に佇んでいる和樹の声は震えていた。


「は? そんなわけないじゃない。バカじゃないの。あんたみたいな奴をどうして好きにならないといけないよ」

「そ、それは……」


 和樹は比較的平凡であり、何かが飛び抜けて優れているわけではなかった。


 それに比べ、目の前に佇む中原梨花なかはら/りかは昔、ミスコンで受賞した経験のある美少女なのである。

 そもそも、最初っから高スペックな彼女と付き合えること自体がおかしかったんだと思う。


 そうだよな……。

 当たり前だよな。


 和樹はショックのあまり顔を強張らせ、声を出せずにいた。


「今日で別れるから。それと、あんたと付き合ってたのは、罰ゲームの一環だったんだからねッ! 分かった?」


 和樹の正面にいる、セミロング風のヘアスタイルな梨花は睨んでいた。


「う、うん」

「じゃあ、いいけど。というか、あんたと付き合うとか、時間の無駄でしかなかったんだけど。ようやくすっきりしたわ。本当にねッ」


 そこまで言わなくてもと、和樹は思う。


 梨花は腕組をし、ため息をはいていた。

 すると、背後の教室の扉が開いて、数人の女子生徒が入ってきたのだ。


「あんたさ、よくこんな奴と二週間も頑張って付き合っていられたよね」

「それね。私なら無理だわ。一日もさ」

「言えてるー、それな的だよねー」


 梨花の周りには三人の女子らが集まって、和樹の方を向いてバカにした感じに発言していたのだ。

 嘲笑の声で会話しながら、彼女らは空き教室から立ち去って行ったのである。






 和樹は、ようやく念願の彼女が出来たと正直嬉しかった。

 けれど、それは単なるまやかしであり、そんな関係もたったの二週間で終わりを告げていたのだ。


 付き合うに至った理由が、一軍の女子グループ同士による罰ゲームだったなんて最悪だ。

 今でも信じたくない。

 これが現実だと受け入れるのが苦しかったからだ。


 漫画内の出来事なら、他人事かもしれないが、それが当事者になると、これほどまで辛い事はない。


 高校生になったら彼女を作って楽しい青春生活を送りたいと思い、高校二年生の今、念願の彼女が出来たと思ったのに、それは単なる幻想だったのは悔しかった。


 空き教室を後にした和樹は、俯きながら夕暮れ時の校舎の廊下を歩いていた。この学校から早く逃げ出したくてしょうがなかったのだ。

 だが、通学用のリュックは教室にあり、一度戻らないといけなかった。


 和樹は教室前に到着すると、その場に立ち止まり、一度深呼吸をする。

 それから扉を開けたのだ。


「……ん」

「え⁉」


 扉を開け、教室に入ろうとした瞬間、和樹は目を丸くする。

 教室内の後ろの席には、クラスメイトである学園一の美少女があられもない姿で席に座っていたからだ。

 そんな彼女も悲鳴のような声を出し、現状に困惑していた。


「え、え⁉ というか、どうしてそんな恰好を⁉」


 和樹は素っ頓狂な声を出す。


「え、そ、それはね、ちょっと色々あって。というか、岸本さんも帰ったんじゃなかったの?」

「いや、ちょっと用事があって、別のところにいて。それと俺、席の横にリュックをおいてたから」

「あ……ほ、本当だね」


 彼女はその現状と向かい、唖然としていた。


 現在、席に座っている稲葉玲奈いなば/れなは露出度高めな服装をしていたのだ。

 制服は着崩しており、ブラジャーも普通に見える状況であった。


 学園でも美少女な彼女は、普段は清楚系なのである。

 それが今では、ハレンチな姿を見せているのだ。


「こ、これには訳があってね。わ、私、へ、変態じゃないよ」


 そう言って玲奈は席から立ち上がって服装を整えようとする。が、意外にも胸がデカく、なかなか制服を整えられずにいた。


 でッ⁉

 え⁉


 制服を着ている時は普通サイズなのに、直接、その胸を目撃すると高校生とは思えないほどであった。

 Gカップよりも大きいかもしれない。

 着やせするタイプなのだろう。


「ね、ねッ、そんなにジロジロみないでよ」


 玲奈は茶髪なロングヘアを揺らしながら、頬を真っ赤にしていた。


「ご、ごめん」

「ちょっと後ろを向いていて」

「は、はい」


 和樹は咄嗟に廊下の方を向いて、瞼をギュッと閉じる事にしたのだ。




「もういいよ」

「うん」


 和樹は振り返る。

 そこにはいつも通りの清楚系な彼女が佇んでいた。

 頬を紅潮させ、和樹の方をジーッと見つめていたのだ。


「ごめん、さっきは」

「別にいいけど。まあ、わざとじゃないだろうけどね」

「ごめん」

「もういいよ。で、でもさ。その代わりに私と付き合ってくれない?」

「君と?」


 和樹は驚き、後ずさってしまう。


「ダメなの? 断るなら、あなたが変態って事を言いふらすよ」

「そ、それは困るよ」


 ただでさえ厳しい高校生活を送っているのに、これ以上となると自分一人ではどうしようもない。


「じゃあ、答えは決まってるよね?」


 玲奈はニコッと美少女らしく笑みを見せる。


「は、はい」

「決定ね」


 勢いに圧倒され、玲奈の問いに頷いてしまったのだ。

 でも、条件が付き合うだけならまだマシな方かもしれない。


 こんな美少女とは、責任を取る形で付き合うだけに決まっている。

 さっきも盛大に罰ゲームの一環だと言われ、振らてしまったのだ。

 あまり期待はしない方がいいと、和樹は思う事にした。


「ねえ、今から遊ばない?」

「これから?」

「いいじゃん。今、二人しかいないでしょ。誰も見ていないし。ね、一緒に帰ろ」

「ま、まあ、いいけど」


 付き合うとかではなく、これはただの友達としてである。

 そう思い込み、和樹は彼女の誘いを受け止めるのだった。


「じゃ、ちょっと待ってて。私、提出するモノがあるから」


 そう言い、彼女は再び席に座り、とある課題と向き合っていた。


「これで終わりね。岸本さんも帰る準備をしてくれないかな?」


 彼女は美少女然としており、明るく爽やかな表情を見せてくれたのだ。


「う、うん」


 和樹は自身の席へ向かい、机の横にかけていた通学用のリュックを手に取ると、それを肩にかける。

 その頃には玲奈も肩に通学用のバッグをかけていて、帰宅する準備は万端であった。


 玲奈は今終わった課題を提出するため、職員室へ行くらしい。

 和樹は彼女と共に教室を後にするのだった。

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