異世界は甘くない
異世界転生に憧れて
第1話 今日とてじめじめ日和
越中八洲(えっちゅうやしまのくに)この町の名前だ。
この町並みは大壁で中が見えない構造の家から真壁のように柱が見えるような家が存在する。道路は整備されていないものの、石畳に並行するように木造建築が立ち並んでいるため、まだ整備されている方である。
ただ時間的にはまだ早朝であったため、霧がかかっており外を歩いている人は見られない。気温は肌寒く、手を擦って少しでも温める。
「まだ、肌寒いな。」
温暖な気候でありながら雨が止まず、ポツポツと小雨が降り続くため、寒く感じる。
自分の見た目は端的に言うと羽織姿だ。きっちりとした風貌ではあるものの窮屈ではない感じがいい。足にはわらじ履いて頭には雨除けのために笠をつけている。
自分は朝から師匠に頼まれていた仕事をやり遂げて帰路についていた。
後ろの袋には沢山の本。魔導書から掃除のやり方など色々な本がある。それを回収してくるのが師匠から頼まれた仕事だ。
様々な本がある中、その中でも自分的に好きな本がある。それは様々な刀が載っている刀剣集。なんでこの本なのかというと刀剣には闘気というものまとわせることできる。しかも刀剣は物によっては闘気をまとわせる量変わってくる。闘気=力だという認識で良い。
この手の本は自分が結構好きなこともあり、是非とも1冊くらい欲しいところだ。
だけど、自分の物になることはない……師匠のお金で買ったものだししょうがない。
そっと門を開け、玄関から家に入る。すると偶然なのか、はたまた必然なのか師匠がいた。
「やっと持ってきたか 凪(なぎ)早く本を渡すゲロ」
そう何を隠そう自分の師匠はカエルだ。
和服をまとい物腰柔らかく腰には刀、足は裸足だ。
如何にもカエルって感じのカエル。
「どうぞ師匠。すごく探すのに手間取ってしまって時間かかりました」
そういって師匠に手元にある本を渡すとカエルの師匠は自分から本を奪うと本を持って廊下にある椅子に身体を預け読み始めた。
「ほうほう、これはまたゲロゲロ」
ブツブツと独り言を口ずさみながら本を読む。
師匠はよく本を読む時、ブツブツと独り言をいう。癖みたいなものだ。
「静かに読んでください。」
そういったのはもう一人の後輩。しかもその子は女の子だ。
セミロングの髪型に茶髪の髪色。特に目立つ点はくせ毛のように髪が広がっており、身長は大体160㎝くらい。ちょっと怖いところもあるけど頼れる姉みたいな感じだ。
師匠は本をペラペラめくりながら小さく声を出す。
「別にいいじゃないか。風香(ふうか)この本は読みごたえがあるゲロ。」
そう女の子の名前は風香っていう。
「また師匠はそう言って、本を読みながらブツブツ言うのはいつも思うのですがどうかと思いますよ」
風香は師匠に呆れ顔になりながらも部屋の片づけを始めた。和室の服や小物関係を片付ける。
「あっそういえば凪~。この部屋の片付け手伝ってよ。まったく終わらないの」
散らばっている本や衣服を畳みながら自分に衣服を渡してくる。
「え~せっかく今帰ってきたのに。少し休んでも……」
そういうとギロっと視線をやられ自分はすぐさま片付けに取り掛かる。風香は怒ると怖いのである。怖いのです。
ある程度片付けが終わると周りは夜になっていた。
部屋の明かりは白熱灯でそんなに強い明かりではないものの部屋全体を照らすに十分なほどの明かりだ。今もパラパラと雨が降っている。
本を読み終えた師匠は、本をパタンと閉じて手元に置いてある風香に入れてもらったお茶をゆっくりと飲んだ。
「ふぅ~面白いかったゲロ。この本は」
本をそっとテーブルに置く。
「師匠・凪、そろそろご飯が出来るので手伝ってもらえる?」
風香が様々なご飯をテーブルの上に置きながら食事の準備をしていた。
「は~い、今行くよ風香」
「今行くゲロ」
そういって部屋に入る師匠を尻目に外を見ると
「はぁ~やっぱりこの場所ってなんなんだろうな」
そうつぶやくと部屋に入った。
雨がパラパラと降る中、外に広がる壮大な光景に驚くことしかできなかった。
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