第6話 メウちゃん
ギルドに戻るとナッツを首に巻くというより、獲物を肩に担ぎ上げているマタギのような状態にみんなが仰天していた。
本人たちは気にすることもない。
受付ピンカの列に並んで待つこと少し。
「まぁ・・・大きな襟巻きですね」
真冬であれば羨ましい。猫好きであればさらに羨ましいことだとピンカは思った。ピンカは犬派である。
ナッツはすっかり夢の中にいる。
「依頼完了の確認を頼みます」
「はい。庭の草刈りに薬草二種ですね」
薬草の買い取りも少なければ受付で出来る。
「承認しました。ポイントを付けましょう」
「ナッツ、起きてカードを出してください」
「うにゃぁ?」
ナッツはストンとシェルスから降りて、ぽやーと周りを見てから、寝ぼけ眼でカードを出した。
「はい。ポイントを入れましたよ。こちらは依頼分のお金です」
ナッツは、ポケットからがま口を出した。ママの小銭入れが部屋にあったので嬉しくなって持っていたのだ。
「あら可愛いお財布ですね」
「うにゅにゅ!ママのお財布にゃ!」
「ママ?」
ナッツは尻尾をゆらゆら、お財布をドヤァっと見せる。
「ここが猫耳にゃんよ」
ママが「ナツのハチワレと一緒ね」って持ってたのをよく覚えている。金魚やパンダもあったが、ナッツはやっぱりママが可愛いと言っていたこれが一番好きだ。
「それは素敵ですね」
ピンカは自分の姿に似たお財布を持つナッツが可愛らしいと思った。
「にゃふふん!」
シェルスは次は解体&買い取りカウンターですよと移動を促す。
ゴツい獣人の合間をぬってたどり着いたカウンターには、クマ獣人がいた。
「お、お前が噂のケット・シーか」
クマ獣人は大きな体を曲げて覗き込む。
「ミャーはネコマタと言うものにゃよ!!」
周りが「ケット・シーだろ!?」とやっぱりズコーっとなってる。
「ネコマタが何か知らんが何持ってきたんだ?」
「ウサギにゃ!ミャーに飛びかかってきたにゃよ!」
「ほぅ!怪我がなくて良かったな」
穴ウサギをマジックバッグから出して見せる。
「おお、丸々しててうまそうだな。全部買い取りで良いのか?」
毛皮と魔石と肉のうち持ち帰りたいものがあるかと聞かれた。
「ミャーはいらないにゃん」
シェルスも必要がないと言うことで丸々買い取り。状態も良いということで相場より少し上乗せで貰えた。
町でお買い物をして帰りましょうとシェルスが言うので、ギルドを出て商店街に向かう。
「いろんな匂いがするにゃ」
「夕食前ですからね」
アキに何か買って帰ろうと見て回る。
食べ物はシェルスとアキは果物や穀物なので神様の用意してくれたものの方が美味しい。
何か無いかと歩いていると雑貨屋が目に止まった。
「女性にはこう言うお店の品が良いでしょう」
シェルスもそう言うのでお店に入ると、ママが好きそうなものがたくさん並んでいる。
「ふにゃぁ」
ナッツはママにも何かプレゼント出来れば良かったのにと少し悲しくなった。
その様子を見ていたシェルスはナッツのそばで膝を落として、
「ママの写真の前に贈り物を置けばママも喜んでくれますよ」
と慰めた。
「そういうもにょかにゃ」
結果、ママには花の飾りがついた小物入れと、アキにはリボンとお花が付いてる髪留めを買った。
初めて自分で稼いだお金なので高いものでは無いけど、記念品だ。
ナッツはシェルスにも髪をまとめる組紐のような物を買った。
「私にもですか?」
「一緒に住む家族だかにゃね」
シェルスは嬉しそうにナッツを撫でる。
お店を出て、家に帰ろうと歩いていたら、街角から「メゥ!!メェーゥ!!」と聞こえてきた。
「メウちゃん?」
「羊のような鳴き声ですね。メウちゃんとは?」
ナッツは声の方に向かって姿を探す。
「メェェウ!」
「ニヤァアアアアアアアアゥ!!」
なんと猫の喧嘩が繰り広げられていたが人の気配ですぐに解散になった。
「メゥ!?」
邪魔をしたなとばかりに威嚇したメウちゃん(仮)は、ナッツの姿を見つけてびっくりした。
「メゥメゥ!!(ケット・シーさま!)」
「にゃ!ミャーはネコマタと言うものにゃよ!!」
「メゥメゥ!!(あんた何言ってんだい!!)」
シェルスには猫語はわからないのでナッツの言葉しかわからなかったが、獣人、人間と同じような会話になってるのだと理解してほっこり眺めていた。
「メウちゃん、にゃんで喧嘩してたにゃか?」
「メゥ!?メウメーゥ!(メウちゃんって誰だい!アタイはサバンナだよ!)」
「サバンニャ!!サバは美味しいにゃね」
「メゥ!?(何!?)」
シェルスは猫劇場を見守っていたが、サバにはズルッとなってしまった。
しばらく二匹は話し込んでいたが、
「メウちゃんじゃにゃいのにゃ・・・確かに色も性格も違うにゃ」
「メゥ!!」
「でもメゥメゥ鳴くにゃ」
「メゥ!?メウメェウメェイイイウォ!?(何言ってんだい!アタイはニャアニャア鳴いてるだろ!?)」
フィシャーーーーァァァと鳴かれてナッツはビクッとなった。
「ごめんなさいにゃ、お気に入りのおやつあげるから許してにゃ」
ナッツはマジックバッグからお皿とニャルカンを取り出して振る舞った。
「メゥ!?(良い匂いだね!?)」
その香りに先ほど争っていた猫たちも集まってきて、シェルスは猫集会が!とその様子を見て悶えた。
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