第七回 リオのカーニバル。(梨緒の視点)


『違うんだよ、母ちゃん』



 ドバシカメラの地下二階のイベント会場。この日はオタサンのトークショー。


 じかに聞けたオタサンの名台詞。クスッと千恵ちえが笑った。


「まるで梨緒りおみたいね。プラモデルが同じように見えて、少し違うもの。ママによく言ってたね。梨花りかおばちゃんも一緒に。それでスタンプラリ―の三文字が集まったら?」


「特典が貰える。先客三十名様。『ファースト・マンダム』の旧キットを現代風に復刻したバンプラの挑戦って奴と、もう一つ……千恵も満足すると思う」


「何々?」


「バンプラだけじゃないの。電車がロボットに変形するものもあるの、その特典に。……でも、それはプラモデルだから、組み立てなきゃなんないけど……」


「組み立てる。梨緒、手伝ってね」


 ちょっぴり潤んだ千恵の目。


 何だか守ってあげたくなって「お姉ちゃんに任せなさい。でも千恵だって手伝ってね」


 という具合に、どうだろう? いつの間にか喧嘩しなくなってる。


「エヘヘ」と笑う千恵に、梨緒も「エヘヘ」と笑ってた。


 そして会場に飾られてるのは、数々のプラモデルや玩具。梨緒が欲しいのは特典で千恵もまた同じ。『ファースト・マンダム』の復刻版。オタサンじゃないけれども『違うんだよ、母ちゃん』は必至。でも特典だから問題なし。それに電車がロボットへ変形する『EV700系・イーブンゲリオン』の二点セットだ。


 トークショーの内容は、オタサンがプラモデルをレビューすることについて。大人の事情はわからないけど、とても苦労して工夫して梨緒たち視聴者を楽しませてる。


 これからも楽しみにしてる。


 後にサイン会がある。だからこその純白なハンケチ。梨緒も、それから千恵にも推しのユーチューバーとなった。配信は二人して観る。そうこの場で、誓い合ったの。



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