第6章②
第60話
……
ここ、が。
「奥に繋がる階段だ。
ここから先、管轄が異なる。」
管轄、か。
この上はどこだったんだろうな。
ま、いいか。
詳しく聞いたら蛇が出そうだ。
内緒の名無氏、俺、まどかちゃん、嘘保険医の順で
闇の中に浮かぶ階段を下りていく。
ここ、閉められたらどうやって上に戻るんだろな。
「この先で見たことは、
一切他言無用。
いいな?」
「うん。」
言う意味も、ない。
世間に告発する意図は微塵もない。
そんなことをしたら、あの文学青年や、
文果の爺の立場がめんどくさいことになる。
「……。」
ん?
「まどかちゃん?」
「……
ここ、だよ。」
あ、あぁ。
って、まどかちゃん、
この奥に入れられてたのかよ。
誰に?
なんで??
「おら、
いくぞ、春間っ。」
あ、あぁ。
*
……
ぐっ。
「……
これ、は。」
信じ、られない。
もっと、むき出しの岩肌とか、
古臭いコンクリートで囲われているだけかと思ったら。
「……
やはり、改修されていたか。」
え。
「しらなかったの?」
「あぁ。
ここで入るのは初めてだからな。」
えぇ?
そんなこと、あるのか。
「……。
時間がない。いくぞ。」
やけに焦ってるな、名無氏。
「うん。」
まどかちゃんの手をしっかり握ると、
ぎゅっと握り返してくる。
うわ。めっちゃ強い。
握力、とんでもないことになってるな。
握りつぶされそうなんだけど、
満面の笑みなんで、弱めてとか言えない。
……
材質が、比較的、新しい。
近代的な建築物だろう。
1960年代後半から80年代前半くらいか。
……
そうだとすると、
葦原佳純も
「……
パスワード、か。」
あぁ。
このドア、電子施錠されてるわけか。
ってことは、電気、しっかり通ってるわけな。
あ、
何個か、試してる。
「……
むう。」
困った顔してるな。
「なんけたなの?」
「……8桁だ。」
無限回突破しづらいな。
そもそも、パスワードロックがかかりそう。
「みつあきくんっ。」
ん……
は?
「あそこのはこにはいってたの。」
う、わ。
あそこの、薬箱みたいなやつか。
「まどかちゃん、
あけるまえに、ちゃんといってね。」
何が入ってるか、わかりゃしないんだから。
「うんっ。」
……あぁ、嬉しそうだなぁ。
撫でたくなる。
で?
メモ用紙、か。
ワープロ打ちの文字で、
『今昔掛物語』
こんじゃくものがたり?
いや、真ん中に掛け
ぶっ!?!?
「……
まどかちゃん、いまの紙、
箱の中に仕舞っておいて。」
「?
うん。」
……あいつっ。
「……けいじさん。
ちょっと、どいて。」
「ん?
あぁ。」
……
あいつ、なに考えてんだ?
『08340272』
ぷしゅっと音がして、
扉がゴトンと開く。
「……
どういうことだ。」
眼鏡の奥から鋭い眼をされても、
答えようがないの。
「せつめいは、あと。
いそぐんでしょ?」
こっちだって、戸惑ってるんだよ。
「あ、あぁ。」
*
……。
迷路みたいだなぁ。
部屋、いくつあるんだ?
千景ハウスの何個分が
……
う、わっ!?
「……これ、は……。」
一面に桃色の鮮やかな花が咲き乱れている。
地下の風にたなびくその姿は、幻想的ですらある。
「やはり、か。
例の花の変種、だな。」
例の花、ねぇ……。
これはもう、どう考えても
「!」
「!?」
な
なんだっ!?
「か、かりんちゃんっ!!」
倉科花梨と、
少年が、二人。
左は、おそらく速水風太。
容姿は悪くないが、陰険な眼をしている。
右は例のネット上で知り合った子。
なるほど、抜群に容姿がいい。
子役で出たら世界中の女子が検索しそうな。
「……
突破、できないんじゃなかったのか。」
「あははは。
そうだったでしょ?
現に、こないだ来た刑事さんも、
怪しげな男たちも、誰も分からなかったじゃない。」
パスワードのことか。
「……
こないだぶりだね、満明君。
きみは、ひとりで来ると思ったけどね。」
あぁ。
そういえば、コイツ、
家のヒントも、さっきの箱も、
ぜんぶ、一人を想定してたよな。
「かりょくがたりなそうだったんで。」
「……そう。
やっと、ここまでおぜんだてしたのに、
きみがまさか、コイツを連れて来るとは。
……
ほんとうに、むねんだよ。」
ん?
「これをどうやって加工してる?
この中に抽出設備があるのか。」
嘘保険医、急に前に出たな。
「加工?」
ん?
「……
そう、か。
はは、ははは。
なにも、知らないで来たのか。
これはとんだお笑い種だ。」
は?
製薬会社の息子、めっちゃ悪役だな。
「惚けるなっ。
稲田徹司が薬を入手するルートは、
ここしかないはずだっ。」
あぁ、教頭のこと。
って、やっぱり真っ黒だったんかい。
「ふぅん。
そっちだけ調べたわけか。
ま、いい。
お前らは、なにも知らずにし
っ!?」
!!!
くそっ!!
「っ!?!?」
え、
あ、あれは
っん
ぐあっ!?
「!!
み、みつあきくんっ!!!」
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