14 ボス
数日も迷宮に潜っていれば、レベルなんか簡単に上がるんじゃないかと思っていた。しかし思いとは裏腹に、オレが望むその瞬間は来る気配すら来なかった。
「レベルあがんないねー、もっと強いやつを倒さなダメか?」
四階層の道中でそう呟いた。
「確かに全然上がらないな。ゲームみたいに上がりやすいもんじゃないんだろ」
「五階層にボスがいるって光くん言ってたよね? そこならレベルあがるんじゃないかな」
初期とは見違えるほどに改善された三木はボス戦を提案した。悪くない考えだ。事実オレもそれを言おうとしていたし、近々行こうとも思っていた。しかし問題が一つある。
「暗馬いないからねぇ、やめとくべき?」
そう、上層に慣れてきたオレたちにこれ以上に助ける必要がないと判断したのか、彼はよく一人行動を取るようになったのだ。暗馬としても、個人で動く方がやりやすいだろうし、あいつは既に一人で完結しているほど生徒の中では強い方である。
まあつまりは、子守りに割く時間を無駄と判断したということだ。
「行ってみよーよ、もうこの辺りの敵に慣れて大丈夫になったし」
本当にこの女は最初と比べて、想像できない発言をするようになったな。
「堂島は? どうよ」
「まあいいんじゃないか?」
「んー、なら行こうか」
こうしてあっさりと決まったボス討伐計画を遂行するため、五階層最奥へと向かった。
一から五階まで来たことがあるが、中の環境はあまり変化が見られない。敵の強さの推移は若干感じることができているが、どうにもずっと続く洞窟の光景に飽き飽きしていた。
「わぁ…なんかすごいね…私ちょっとびびっちゃってる」
巨大な鉄門がそこにボスがいることをわかりやすく知らせている。しかし、今更引き返すのは選択肢から除外されていた。
「じゃあ、開けるぞ」
堂島が先陣切って扉に手を掛ける。中は広く、狭苦しい今までにあった道中の洞窟内とは思えなかった。
「あいつか…」
先に見えたのはでかい小鬼。でかいのに小鬼とは筋が通っていないが、あれを表すならそんな感じ。
「気づかれたね、よしやるよ三木」
鉄門を開ける前から武器は手に持っていて、準備はもうできている。そしてこの距離なら彼女の間合いだ。
「ん、
高圧の熱線が目では追えない速度で鬼を襲いかかった。直撃しているが、ダメージはどうだ。
「わっ防がれた!」
無骨な大剣で一瞬の間にあの熱線を逸らしていたのだ。
「ふんッ」
堂島は身体強化を発動し、熱線が終わると同時にその剣を打ち下ろす。
「ッ! これは…!」
鋼が激しく相打つ鈍音が、彼の攻撃を防いだことを意味した。
「一旦下がれ!」
鬼の目線は既に彼を標的としており、今にも大剣を喰らわせようとしているように見える。
しかし、彼は剣撃を弾かれた反動ですぐさま動くことができず、不運にもロケットみたいな凶刃をモロに喰らってしまう。そして勢いに押され、彼は後方へと吹き飛ばされた。
同時に火玉握りつぶして右腕を赤熱化、そして能力の発動。直後、鬼は遠距離攻撃ができる三木を狙って、仰々しい顔で駆け出した。
オレなんぞ眼中にないかのように素通りしようとしかけたが、手をかざして火を吹かせる。
「躱すか」
かなり近い距離だったが、意外にも当たることはなかった。そして、次の一手は迅速に決まることになる。
攻撃対象をオレに移し、再び大剣を向かわせる。しかしそれを呆気なく回避することに成功。
たった今間近で対峙してわかったが、やはり重い大剣を扱うだけあって、振りかぶるために少しのタメが入る。
つまりこいつの動きを手に取るように見えるオレにとって、速度が遅いこの攻撃は躱すのに難しくない。
一撃終わりのこのデカい隙に加えて、ガラ空きの腹部にすかさず剣を走らせる。
「ああ?」
直撃、だが思い描いていた未来に到着することはなく、その刃は筋肉の装甲を浅く切り分けただけで、深傷を負わせるには至らない。
続く大剣の打ち込みを察知し、鬼の大股を潜り抜けると共に火炎を吹き飛ばす。魔法の反動をうまく使い距離を取ったが、果たして今のはこいつに傷を与えられただろうか
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