異変と空腹と思考と

 ここはシェルリアの屋敷。

 シェルリアは二階のテラスから町があろう方角をみていた。


(リルナは今どの辺かしら? ああ……早く逢いたいです。今度は、いつ逢えるのかなぁ)


 そう思い遠くをみつめる。その表情には哀愁が漂っていた。


「シェルリア様、お話があるのですがよろしいでしょうか?」


 背後からラナスの声が聞こえシェルリアは驚き振り返る。


「ラナス……いきなり後ろに現れないでって、いつも言っているわよね」

「そうでした……申し訳ありません」

「まあいいわ。それで、どうしたの?」


 そう言われラナスは、シェルリアに自分の思っていることを話した。


「それは、いい案ですわ。それが可能になれば定期的にリルナと逢える」


 シェルリアはラナスの提案が余りにも素敵すぎて嬉しくなり踊り出してしまう。

 その踊りは、まるで妖精が舞っているように華麗で軽やかにステップを踏んでいる。


「それでは、ギルドの方に依頼をして参ります」

「ええ、ラナス……お願いしますね」


 それを聞きラナスは頷き、スッと姿を消した。


「……普通に部屋から出られないのかしら。現れる時も……心臓に悪すぎです」


 そう言いシェルリアは、ハァーっと息を漏らす。


「そうね……まあいいか。それよりも、リルナが依頼を受けてくれれば……いつも一緒に居られるわ」


 シェルリアはそう言った瞬間、自分の胸の鼓動が高鳴るのを感じた。


「えっ? なんでしょう……この感情は……。胸が苦しい……病気かしら? 変ですわ。少し休みましょう……疲れたのかも」


 胸を押さえながら寝室へ向かいベッドに横になる。

 その後シェルリアは少しの間ねむった。


 ★♡★


 ここはベティナの町。町の街路には人が行き交っている。

 リルナステファは街路を歩き周囲を見回していた。


(お腹がすいたわ。森を抜けるのに結構な時間と体力を使ってしまいました)


 そうリルナステファは町に着くも、いつもの食事処が閉まっていたため探していたのである。


(慣れない所に下手に入って代金が高いと困ります。どうしましょう……屋台で買って、その辺で食べた方が無難かしらね)


 そう考えが纏まると屋台が立ち並ぶ市場街へ向かった。


 ★♡★


「この辺でいいですね」


 ラナスはそう言いながらベティナの町の外側にあるラビアス草原に現れる。

 因みに転移魔法や召喚魔法を使えるラナスは魔女と云ってもいい存在だろう。


「町のそばに出てよかったです。偶に違う場所に転移してしまうのよね」


 そう言いラナスは苦笑した。

 その後ラナスは町へと向かい歩きだす。


 ★♡★


 町に入ったラナスはギルドを目指し歩きだした。


(以前に来た時よりも人の数が減ったように思います。やはり白き魔女の噂のせいでしょうか。

 もしそうならば……シェルリア様が可哀そう。これを知ったら心を痛めるでしょうね)


 そう思い歩きながら周囲を見渡し建物などをみる。


(見慣れない建物が何件か建ってます。人が減った訳ではないのでしょうか? 今は人通りが少ないだけなのかもしれませんね。

 それならば……よいのですが。でも……シェルリア様の話では、リルナステファが言っていた白き魔女の噂……。

 シェルリア様が人を殺す訳ありません。ですが私であれば別でしょうが)


 目を光らせるとラナスは怖いくらいの笑みを浮かべた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る