第3話勇者ギルド
「すごい、これはすごいですよ!!」
俺は今、魔水晶に手をかざしていた。
この魔水晶に、手をかざすと自分の能力が、わかるらしい。
「コウゼ様の能力は、黒夜剣ダークナイトソードというものです!剣士の極級の能力で、長らく欠番であったはじまりの10人の剣士の、八番目の能力です!」フープとはまた違うエルフ耳の女性はとても驚きながらそう言った。
「えぇ!?はじまりの剣士の能力?そのへん詳しく教えてもらっていいですか?」
俺は何がなんだかわからずに、そう聞いた。
これがデザイアの言っていた、俺の秘められた能力なのか?
「ええ!!もちろんです!!」
このエルフ耳の女性はとても興奮している。たぶんこの能力は、俺の想像を遥かに上回るゲキヤバ能力なんだろう。
「ご存知の通りかと思いますが、千五百年前魔王を倒した、はじまりの剣士。その能力は1人目から、剣神ブレイブマスター、神龍剣ゴッドドラゴンソード、輝星剣ステラソード、恋炎剣ラブファイアソード、死神剣デスゴッドソード、幻想剣ファンタジーソード、月灯剣ムーンライトソード、黒夜剣ダークナイトソード、奈落剣エンドソード、悪魔剣デビルソード、という全員が、剣士の分岐の極級能力で、最強能力です。この十人の能力は、代々子孫に継承されていくシステムなんです。しかし八番目の、黒夜剣ダークナイトソードだけは、怠ける事などを許さず、生涯剣を振り続け、子供が出来なかったため、この能力は一代で途絶え、はじまりの10人の剣士の八番目は、欠番となったのです。」
エルフ耳の女性は話し終えた。俺の、まず最初に出てきた言葉は異世界カッケーだった。子供みたいと馬鹿にされるかもしれないが、俺は夢見るニートつまり子供とあまり変わらないのだ。しかし疑問に思った部分もある。
「先ほどこの世界に来たとき、フープという方から軽く能力について説明されたんですけど、剣神ブレイブマスターというのは、戦士の極級能力なのでは?」
剣神ブレイブマスターは、戦士の極級能力俺はさっきフープにそう言われた。
「はい、その通りです。」
「どっちにも共通する極級能力なんですか?」
「はい、ですが詳しく言いますと、剣士系の能力は、もうこの世界には、はじまりの剣士の十個の能力以外存在していません。」
「存在していない?どういうことですか?」
「それは千五百年前、当時の国王がはじまりの剣士の栄誉を称え、剣士という能力を永久に誕生しないものとして、代わりに戦士という能力を作られたのです。」
「国王はなぜそんな事を?」
「最強の能力者は、一人しかいないほうがかっこいいじゃないですか。」
ん?まぁ確かにそれはそうだけど、かっこよさのためだけに当時の国王はそんなめんどくさいことをしたのか?いや、でもその分能力が絞られて、剣神ブレイブマスターが生まれやすくなるからそれはそれでいいことなのか?
「あの、じゃあなぜ剣神ブレイブマスターは、共通しているんですか?」
「まあまあ!戦士系の剣神と、剣士系の剣神では、能力に大幅な差がありますよ。能力名が一緒なだけで、全く共通していません。」
おいおい、まじで千五百年前の国王何してんだ?
「当時の国王がそんな変なことをしていなかったら、戦争も簡単に止められるのでは?」
「それは否定はできません。ですが、魔王討伐を簡単に考えてはいけませんよ。今の魔王の力は未知数ですし、千五百年もすれば最強の、能力も衰えていきます。そして何より、剣士の極級能力を最大限引き出すには、無魔剣ムーマけんというものを使わなくてはなりません。その剣は千五百年前から王国に伝わる伝説の剣で、各能力に一本ずつしかないのです。なので、結局最高の力を出せるのは、一人なのです。」
ほーん。その後俺は、なら今の国王に頼んで
剣士能力を復活させることはできないのですか?ということを聞いてみたが、もう、一度かけられた呪というのは解けないらしい。
結局俺は、この世界で真面目に生きていくしかないのだろう。覚悟は出来ていたはずで
最強能力のはずだけど、改めて思うと少し怖い。
「今日はもう、お疲れでしょうし、小屋や、酒場などに行ってお休みください。」
エルフ耳の女性は、俺の様子を察したかのようにそう言った。
俺はまだ眠る気にはならなかったので、ふらふらと酒場へ向かった。酒は元の世界ではあまり飲まないようにしていた…はず。なぜなのかわからないけどこの世界に来てからずっと
元の世界の記憶が曖昧だ。
酒場はとても賑やかだった。もういろんな勇者たちは、俺の事を知っているのか、酒場に入ると俺の顔をみるなり、さらにガヤガヤしだした。
「あいつだろ、はじまりの剣士の八番目の能力のやつは」
「そうみたいだねー。でもなんか弱そうじゃね?」
「ばか、お前そんなこと言ったらみじん切りにされるぞ」
「そうだそうだ、黒夜剣は怖いんだったね。」
なんか変な感じで噂されてる、馬鹿にされたくらいで斬ったりしないのに。てか俺そもそもまだ剣持ってねえし。
「まぁ見て、あの人よ、黒夜剣!かっこいいわー。」
「あんたそんなジロジロ見てたら斬られるわよ。」
だから斬んねえっつうの。
だが、それは先代の黒夜剣に問題がある。彼は、生涯独り身で剣を振り続けた。というのと同時に、何でもすぐ斬りたがる変人だったと。伝説にはそう記されている。
だから、黒夜剣のイメージは悪く、伝説の剣士であるというのに、俺の近くに人は集まってこなかった。でも少し離れた所で、ずっとヒソヒソ言われ、これ以上酒場にいるのは良くないと思い、小屋へ向かった。
小屋は、ギルドから割と近いところにあり、歩いて向かう。小屋というのは、トイレとか風呂場とか、生活できる最低限のものが揃っている。簡単にいえばホテルの劣化版みたいな感じだ。俺は思ったより疲れていたのか
小屋に入ってそうそうに布団に身を投げた。
思ってたんと違う!!突如この世界に召喚された異世界人!そいつがかつて魔王を倒した最強の能力!!なんかもっとこう、チヤホヤされるのではないのか!!?異世界ってこんなもんなのか!!??
異世界がこの程度なわけが無い。
酒場とかで、同じく最強能力のやつと出会い、ともに戦い大親友になったり、美少女ヒロインとかがいるのではないのか?
俺は真剣に考えていた。
しかし、俺のいる異世界は、想像の異世界とは違い、俺に厳しい。
俺はその後、最低限の人間的行動をとってから、寝た。
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