ハイスペックニートがある日拾った木の棒で異世界救いました!?
@112896takeshi
第1話物語の始まり
コウゼ殿前へ」
「は!」
コウゼと呼ばれた男は一歩ずつ前へ国王と、国王の一人娘の元へ近づいていく。千年間もの間、王国を脅かし続けてきた魔王が討伐されてから一年が過ぎた。
魔王討伐隊の最前線で常に戦い、魔王を斬ったものとして、国王の娘と結婚できることになったコウゼ。
これは、自分の生きる意味が分からなくなり死のうとしたハイスペックニートが、突然王国に召喚され、ある日拾った木の棒で異世界を救うお話。
第一章 始まりの終わり
俺の名は高井コウゼ、日本に住む二十二歳、仕事はなく、三つ下に妹がいる。
世間一般的にニートと呼ばれる部類だ、
だが俺は、世の中に何百万とあふれているニートとは少し違う、ふふ なぜかって?教えてやろう。俺は学生時代中学、高校と六年連続体力テスト学校一位そして、その六年間彼女が尽きたこともない。俺はハイスペックな学生時代を過ごしていたんだ。
ニートになってからの俺の一日は朝八時起床
八時半から朝食、九時から九時半までの一時間半のランニング、そして風呂に入り一時までゲーム、一時半から昼食、午後は寝たりパチンコに行ったりして適当に時間を潰し、その後、夜ご飯寝るまでの時間は筋トレして、十時半就寝。
と、こんな毎日を過ごしている。つまりだ
何が言いたいのかというと俺はハイスペックニートなのだ!ニートになると親に言った時最初はしこたま怒られ父親とは未だに口を聞いてもらえず、母とも最低限の会話しかできなくなってしまった、しかし、心優しい母親は毎月三十万円もの金を俺に送ってくれていて、俺はそれで生計を立てている。
持つべきものは、優しい母親なのだ!!
まぁ最初は全くこんな状態になるつもりじゃなかったんだけどな、俺は昔からスポーツが得意だから体育大学に行きたかったんだ、でも、高三の受験期に同じく受験期の三こ下の妹が病気で入院することになってしまったんだ。最初は電話しながら一緒に勉強とかしてたんだけど、会えない日が続いて重度のシスコンの俺のシスコン魂は燃え上がり、お見舞いは家族みんなで行くって決まってたんだけど、俺は親に隠れて毎日お見舞いに行った。そう、毎日だ、俺はその時間が何よりも幸せで、勉強なんて全く手をつけていなかった。
真面目な妹は俺と会わない時間は、ちょくちょく勉強していたらしいけど、俺は全くしていなかった。朝から学校に行って、下校中に病院に行き、家に着いてからは妹との遊びを考え、俺に勉強する暇なんてなかった。
母親は俺が隠れてお見舞いに行ってるのを知っていたらしい、だけど母は俺の事を止めたりはしなかった。
そんな日常がずっと続き受験よりギリギリ前に妹は無事退院することができた。
俺は今から勉強しようと思ってやり始めたが
力の差はむなしく、元々頭がいい方でもない俺は見事に全落ち。妹は目指していた公立高校になんとか入ることが出来ていた。
俺は、そのまま就職とか、浪人とかいろいろ考えたんだけど、勉強したくないし、受験に全落ちして、気力もなくなっていた俺は、ニートになった。親とは絶縁しかけ、当時の彼女には別れを告げられた。
しかし、妹は、お兄ちゃんなら大丈夫だよ!と、かわいい声で励ましてくれた。
それはまるで、千年に一人の少女のようだった。
そんなこんなで、月日は流れ今に至る。
妹はたまに遊びに来てくれるし、今となっては、この生活を一生続けるのも悪くないなと
思っている。でも、いつまでも、親の金で生活するのは悪いから気が向いたら、しっかり仕事について、もらったお金は全部返そうとも思っているが、当分は今まで通りボチボチ生活していこうと思っている。
しかし、そんなことはなかった。
いつも通り、ランニングをしようと外に出たある日の朝、突然母から電話がかかってきたのだ。「もしもしコウゼ?急で悪いんだけど第一病院に来てくれない?」という内容の電話だった。第一病院というのは昔妹が入院していた、病院のことで、この辺の地域では一番大きく、たいていの怪我や、病気は、その病院に行けば大丈夫って感じの、すごい病院だ。
俺はなぜそこに呼ばれるのか疑問に思ったけど、とりあえず行ってみることにした。
「わかった、なにかいる?」
俺は一応聞いてみた
「心の準備だけしといて」
母は静かにスラスラと言った。
俺の家から病院までは多少距離があるので、バスに乗って行った。その間に俺は、いろいろなことを考えた。最後の母の言葉が気になって仕方がなかった。誰かが病気になったのか?俺は一番高い可能性を考えた、父は俺がニートになってから一切口をきいてもらえなくなったけど、剣道をしていて、何かを斬るのが好きという、変な趣味の持ち主だ、でも昔からずっと健康で、体調を崩した父なんて一度も見たことがない。
だから、父は大丈夫だろう。じゃあ次は母だ
俺の母は昔から何かの病気を持っているらしく、毎日一時間部屋の鍵を閉めて、誰とも会えない時間が一緒に住んでる時はあったな。
もしかすると、それが悪化したのかもしれない。でも、電話をかけてきたのは母だ、母は少し秘密主義なところがあるので、自分の持病が悪化しても俺に言うことはないだろう。
なら最後に残るのは妹だ、妹は三年前に病気になったこと以外は特に何もない。その病気も完治したはずだし、父と一緒で健康的な生活をしている。俺は全く見当もつかなくなった。しかし、不安は不安だ、できるだけ急いで行こうと、俺は病院の一つ前の停留所で降りて病院まで全力疾走した。
病院の中に入り、母に指定された号室まで行くと、扉の前で母が待っていた。
「どうしたの?」
俺はそう聞いてみたけど
母はそれを無視して、俺の腕を掴み扉を開けた。俺は何が何だか分かんなかったが母と一緒に病院へ、入った。
扉の先には、全身が包帯でぐるぐる巻きになった、ミイラのような人が寝ていた。
俺は何かのドッキリなのかと思い、そのミイラに近づいてみた。近づくと、父がいた父はそのミイラの手のあたりを目から涙を流しながら、力強く握っている。あぁ俺は全てを理解した。ミイラになっているのは妹だ。
部屋に入っから立ち止まっている俺の後ろから、母の声が聞こえてきた。
「くるみは昨日バイト帰りに車とぶつかったの。」
くるみというのは俺の妹の名前で間違えなかった。
その後俺は母に、詳しい事を聞いた。母の話を聞いている間俺はまだ目の前の状況が信じられなかった。くるみは、四年前に、重い病気になって入院した。俺が見舞いに行くときはいつも笑顔だったが、たまに目が赤く充血
している時があった。学校に行けず、友達と話せず辛い日々を過ごして、たまに泣いていたのだろう。それなのになぜ、この世界はくるみばかりいじめるのだろう。もし、他の世界に生まれていたら、くるみは元気に過ごせていたのだろうか、どうか神でも仏でもなんでもいいから、くるみを助けてくれ。
俺はただ祈ることしか出来なかった。
俺はベッドに近づき、くるみのもう片方の手を握ろうとした。しかしその瞬間「くるみに触れるなクソニート、お前がもっとちゃんとしていれば、こんなふうにはならなかった。」
と父の怒号が聞こえてきた。俺は見当違いな怒りだと思い、くるみの手を握った。
それはとても冷たくなっていた。俺は目から涙がこみ上げてきた。それは、もうこの世界にくるみは居ないのだとわかったからだった。くるみの手を握り、俺は泣いていると、父にその手を掴まれた。「聞こえなかったか?くるみに触れるな、クソ野郎部屋から出ていけ!」
俺は父になぜそう言われたのかわからない、でもそれは、はじめて見る父の本物の怒りだった。俺や、くるみが怠けることを許さず
ずっと責任持って一人前にしようと、頑張って俺達を育ててくれた父だ。それが今はどうだろう。息子はニートになり、ダラダラしていて、父が希望を見いだした娘はもう、二度とこの世に帰ってこない。
俺は父に押され、病室の外に出されていた。
しばらく病院内に座っていると、母からメッセージが届いた。「私も、実はお父さんにすごく同意している。あなたにお金を送っていたのだって、あなたのためじゃなく、くるみが喜ぶからで、今回の事を教えてあげたのだって、元々家族だった、人間への最低限の礼儀だと思って、教えてあげたものだし、現にあなたへお金を送っていたせいで、くるみは、最速の治療を受けられなかったの。だからもう、あなたにお金を送るのは辞める。もう、くるみは居なくなり、あなたを愛している人はいない。とっとと消えてちょうだい。」
という内容だった。
俺はその文が信じられなかった。俺はずっと勘違いしていたのかもしれない。そういえば、父と母は昔から俺より、くるみを可愛がっていた。そのくるみが死んだから、今はおかしくなっているのか?俺はあまり考えたくなかった。くるみが死んだ事は言うまでもなく、俺だって悲しい。
俺はその後、病室に戻る勇気も、出歩く元気も無かったので、無気力のまま、家に帰った。俺は、母からもらっている金で一人暮らしをしている。前はよくくるみが遊びに来たが、そのくるみがこの家に来ることはもうない。何も考えたくなかった俺は、飯も食わず、風呂にも入らず、布団に入った。今日はいろんなことがあったせいだろう。眠りにつくのはたやすかった。
次の日目が覚めて、軽く朝食をとり、なんの予定もなく、外に出た。もうこの世界から、俺は必要ない。もう、自分のことなんて、どうでもよくなっていた。
俺はなんの予定も無かったが、歩いて、第一病院を目指していた。歩いて病院まで行く時の景色は初めて見るものが多く、新鮮だった。
だいぶ歩いた頃だろうか、橋が見えてきた。
柵から顔を出して、下をみると、二十メートルほど下に、川が見えた。子供の頃、父やくるみと、バーベキューをしたことのある、浅い川だ。俺は、上からみると綺麗だなと、思うと同時に、ここから落ちたら、確実に死ねるなと思った。なぜそう思ったのかも、わからないし、なぜ次のことをしようとしたのかも、わからない。
俺は柵の上にたち、飛び降りようと、していた。
もう充分だ、これ以上生きても、くるみもいない、誰も俺を愛していない、家庭もなければ、仕事もない。俺の心は、昨日の母のメッセージで、もう壊れていた。「俺、今まで何してたんだろうな」俺は自分の人生を簡単に振り返り、そう言って頭から下へ落ちた。落ちている途中、頭の中でくるみの姿が思い出された。くるみは、去年新成人になった。その時のくるみは、朝赤いドレスをきて、俺の家に、来た。その時の姿を思い出して俺は、あぁ、綺麗だと呟いた。次の瞬間、俺は二十メートルの高さから浅い川に、頭から突っ込んだ。
これでよかったんだ。これで全部終わる。
「やっと逝ける」
俺は暖かな温もりを感じながら、そう言った。
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