異世海遠征
脇役A
プロローグ
永きに渡る人間と魔王の戦い。後世にて『魔王大戦』と呼ばれる戦争は、1つの勇者パーティの手によって終結した。
魔王軍率いる魔族との交戦により、甚大な被害を受けていた人類だが、大陸各国の協力により迅速な復興が行われる。
そして終戦から80年。もはや大戦によって齎された被害は見る影もなく、人類は平和な日々を過ごしていた。
しかしながら、平和な日々というものは退屈なもので、戦後に生み出された娯楽に飽き足らず、人々はさらなる興奮を求め始めていた。
そんな中、とある一報が人々の話題をさらう。
【熱地帯雨林に眠る古代遺跡の発見】
1人の男が、熱帯地雨林の奥深くに眠る古代遺跡を発見し、そこにあった遺物を持ち帰った。
そして、持ち帰った遺物と発見された遺跡には、これまでの人類の魔導の歴史を覆す程の文化的価値があったのだ。
その事実が判明し、魔導研究機関は発見者である男に莫大な報奨金を与えた。その金額は、王都に新しいギルドを設立してなお有り余るほど。
退屈を持て余した大衆のもとに飛び込み、人々が抱く未知への興味、そして莫大な富への欲望を掻き立てたこの一報は、瞬く間に世界中を駆け巡ることとなる。
日常から非日常へ。退屈は熱狂へ。
人々は興味と浪漫を胸に駆け出す。未知を解き明かし、大金を手にするのは自分だと。
それから40年もの間。未知を照らす人々-探索者によって、地上の大部分が開拓されていく。その過程で数多の遺跡や遺物が発見され、様々な文明や技術が明らかとなっていった。
発見された技術の中には、現代技術よりも優れたものも少なからずあり、それらを専門家達が積極的に体系へ取り入れたことで、人類の文明は目まぐるしい発展をみせた。
また、探索者の中には『英雄』と呼ぶに相応しい偉業と実力を兼ね備えた者達も誕生し、吟遊詩人が語る英雄譚の新たな一幕にその名を連ねていった。
そして魔王討伐から120年の今、探索者は尚も増え続けている。地上の大部分が既に探索、開拓されたにも関わらず。
何故か。その理由を問えば、探索者達は口を揃えて言うことだろう。『三大未知』と。
雲より遙か高くに聳え立つ、前人未到なる霊峰の頂。
大陸最北端の地に鎮座し、未だその全貌すら掴めぬ巨大迷宮。
そして、深海。
判明のきっかけは三者三様であった。
大陸最高峰の山が、『神の住む山』として麓の村人達に語り継がれていたことから、その神秘性が明らかとなったり。
とある遺跡で発見された遺物が、常に一箇所へ反応を示したことが発端となり、北の魔王城よりもさらに北で巨大な建造物が発見されたり。
海の底より送られた差出人不明の手紙と、そこに書かれた内容から、海中に秘められた未知と魅力を人々に気づかせたり。
発見当時は、発見理由の特殊さこそあれ、現在ほどの話題性を持つものではなかった。結局、探索者達はこれまでの未知と同じように開拓されるものだと思っていたのだ。
しかしながら、その予想は裏切られることとなる。最初の異変は、ある高名な探索者の失踪だった。当時の探索者の中でも5本の指にはいるであろう実力と実績をもった探索者が、巨大迷宮での目撃情報を最後に姿を消したのだ。
それからと言うもの、多くの探索者が三大未知に挑み、少なくない数の命を落としていった。次第に、踏破の難しさと莫大な未探索領域から、探索者達の話題をさらっていくことになる。
そうして今、探索者達の心を掴んで離さない三つの未知は、そのほとんどが未だ謎に包まれていること、そして多くの遺物や文明の跡地が眠っていると予想されることから、探索者ギルド直々に踏破依頼が出されている。
依頼名は【
それは、古今東西、生けとし死せる、全ての探索者の夢。
達成報酬は今も上がり続け、その総額はもはや一国の予算を補える程に上り詰めていた。
踏破によって、莫大な富と名声が約束されている依頼へ、探索者達は今日も未知へと身を投じる。それぞれの目的を抱えて。
この物語は、探索時代の全盛期、数多の探索者達が未知と浪漫を追い求めてその命を燃やした時代。そんな時代に誕生した、1つの探索者パーティの話。
異世海遠征 脇役A @Widthfalls
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