戦国時代に何か一つを持っていくなら何にしますか?
雨宮 徹@n回目の殺人🍑
第1話
「なあ、ハヤト。君は戦国時代に行くなら何を持っていきたい?」
それは歴史の授業中のことだった。教室には、静まり返った空気が漂い、先生が熱心に戦国時代の文化や風俗について語っている。その言葉の一つ一つは、俺の耳には入らず、代わりに幻聴が聞こえてきた。
「ワシは神様だ。これは幻聴ではない。君を戦国時代に飛ばすために聞いている」
やばい、幻聴がもう一度聞こえた。しかも、馬鹿げた内容の。神様が本当に俺に話しかけているなんて、あり得ないだろ。普通なら、こんなことが起こるわけがない。周りの友達は真面目に授業を受けているのに、俺だけが頭がおかしくなったのか?
「ようはあれだよ、『離島に一つ持っていくなら何がいい?』みたいなものだよ」
内容がおかしくないか? 本当に神様の言葉なら、そんな気軽に言って欲しくないんだけど! 戦国時代に飛ばされるなんて、冗談じゃない。だが、考えれば考えるほど、頭の中が混乱していく。
「これが最後じゃ。何を持っていきたい? 答えがなければ、そのまま飛ばすけど」
これは幻聴だ。そうだ、頭がおかしくなったんだ。いや、それはそれで困るけれど! 思わず頭を抱えてしまう。戦国時代に行くなんて、普通の学生が思いつくことではないだろう。先生は戦国時代について、文化面がどうとか、戦の歴史がどうとか喋っているが、俺にとっては関係ない。頭の中は神様の言葉でいっぱいだ。
「じゃあ、何もなしで――」
「分かった! スマホ! スマホを持っていく!」
気がつくと、俺はいつの間にか立ち上がって、そう叫んでいた。周りの視線が痛い。完全に頭のヤバいやつ認定されたわ。クラスメートたちは驚いた顔をしている。自分がどれだけ恥ずかしいことを言ったのか、少しだけ後悔するが、すでに遅い。
「じゃあ、スマホね。グッドラック、幸運を祈るよ」
その瞬間、教室の空気が変わった。何かが動き出すのを感じた。まるで、周りの世界が歪み始めるような、不思議な感覚に襲われる。次の瞬間、眩しい光に包まれて、教室の景色が消えていった。
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