第214話

その元サヤに戻って一週間後のことだった。



たまたまショッピングモールで六神とプラプラ買い物していたら、たまたま手を繋ぐまゆゆと池駒に遭遇した。



私たちを見るなり、まゆゆと池駒がすーっと距離をとって。六神が私の肩に手を回して言った。


 

「俺たちこの度晴れて復縁いたしまして。」


「……え?元サヤ?」


「そちらさんはどういったご関係で?手を繋ぐただの同期とか?」



ピアスを光らせる池駒が、物怖じせずまゆゆの手を掴み言った。


 

「ただの恋人ですけどなにか?」



可愛くはにかむまゆゆの反対の手には、韓国アイドルショップの大きな袋があって。池駒の反対の手には、まゆゆの推しであるRainLADYレインレディの大きなクッションが入った袋があった。



あ、まゆゆコイツ、荷物持ちで池駒連れてきたな。



それがお互いの近況報告となった。




  

RainLADY、何一つ興味が湧かないと思っていたけれど。実は今回の旅行を計画するにあたり、私とまゆゆはとんでもない人物に遭遇していた。



まゆゆが親から譲り受けた株主優待クーポンを持っていたため、旅行代理店で予約することにした私たち。



会社の近くだと会社の人間にばれると思い、少し離れた代理店に出向いたのだが。



まゆゆが自然とカウンターに座った目の前にいたのは、なんと水絵みえさんだった。



 

「……あらいらっしゃいませー。旅行をお探しでしたかー。」



今日も艷やかな黒髪ストレートが、見た目だけの大和撫子を一層引き立てている。



あくびをしながら接客をする水絵さんに、まゆゆが片眉を釣り上げ、信じられないといった表情をする。うん、それについては私も同感だ。

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