第198話
午後から行われた本部での研修会。
休憩時間に資料を持ち、前の席に座る朋政課長の元へ行く。
「課長、水素の輸送用タンクコンテナって、ユニコーン企業が自社買いするってほんとですか?」
断続的な貿易が見込めないこの時代、基本的にコンテナはうちが企業にレンタル、リースすることになっているが、たまに自社で専用コンテナを購入する企業がある。
課長が契約を取ってきたユニコーン企業が、まさに今購入を検討しているとの情報を、前回の研修時に噂で聞いていた。
「…ああ、本当だとして、それが君と何の関係があるの?」
「いやあ課長ならすでに各社見積をとっているとは思うんですけど、一つ気になるタンクを見つけまして。」
俺は持っていた資料を見せた。
「……ここって、オーストラリア主体の企業?」
「ええ、前に課長が横浜で担当していた企業が、このオーストラリアの企業に吸収されましてね。もしここでタンクコンテナを仕入れることができれば、オーストラリアでの支部設置にも協力してもらえるんじゃないかと。」
「へえ。M&Aね。」
「課長ならもう知ってるかと思ってましたが知らなかったですか?」
「…ていうか僕がオーストラリアに行くこと前提で話進めてるよね。」
「さっさと目の届かないところに消えてほしいだなんてこれっぽっちも思っちゃいません。」
「その癖誰かさんが本部長に僕のオーストラリア常駐を推薦してたみたいじゃない?」
「朋政課長のお陰で横浜支部にいる後輩のミスが滞りなく片付けられたなんて、本部長の耳には入れてませんよ。」
笑顔で伝えれば、課長はさらに億千万の笑顔で返してきて。一瞬たじろいだ。
顔面つええ。
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