第173話
ある日の朝、テレビをつければ、朝のワイドショー番組でアイドルグループのライブ映像が流れていた。
6人組の、素人目からみても名高い、サニーファクトエンターテイメントから輩出された男性アイドルグループ『RainLADY』。
そのライブ映像で、6人組の中でも恐らくエースであろう男が、汗をほとばしらせながら大きく手を振り一礼をした。
そして、『みんなありがとー!!』という需要しかない笑顔を振りまいたかと思えば、何かスイッチが切れたかのように空気が変わる。
『あー……おれたちを ここまで そだててくれた おんじんである サニーさんには とてもかんしゃしています』
顔が、一気にやる気を失くしている。さっきまでのあざとスマイルどこに置き忘れた?いかにも、カンペ通りに読んでますけど?といった感じだ。
『サニーさん ありがとう ほんとうに ありがとう 笑 ございます』
芸能界に全く興味のない俺ですら、興をそそられた。なんて名前だったかと画面を見れば、「
男寄りの中性的な顔立ちに、ゆるいベージュの毛先には汗がしたたっているのに清潔感しか感じられない。しかし、次の彼の言葉は、またそれらの空気とは違ったものを醸し出す。
『俺の大事なものを守るため、俺は今を素直に生きています。でももしいつか俺が全てを捨てる覚悟ができた時、必ず、必ず君を迎えに行くから!』
誰もその意味深な発言を理解できないまま、黄色い声援が湧き上がる。
少し、嫌な予感はした。
朋政課長ほどの勘は持ち合わせてはないものの、俺が調べた“稲垣水絵”という人物に、もしかすると繋がるものがあるのではないかと。
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