第157話
「お前と俺の初セックスを覚えてないとか心外だし」
会社で言っていたあれは、六神にとってきっと凄く重要なことで。私がそれを覚えていなかったから、吐瀉物事件の時は本気で怒っていたのだろう。
付き合っている時にずっと塩対応だった六神がなんで塩だったのか、分かった気がする。きっと、六神は重いと思われたくなくて…
なにもかも覚えていない塩なのは、きっと私の方だ。
「重いと思われたくないから、あんまメッセージも送れなかったし」
「うん、」
「重いと思われたくないから、電話もあんまできなかったし」
「……うん。でも、私は寂しかったし。」
「うん。駆け引きしすぎたせいで、お前は今にも課長のとこいきそうだし。」
六神がまた、縋るようにぎゅっと私を抱きしめる。私はその湿った髪を撫でながら、六神を安心させようと試みた。
「大丈夫。どこにもいかないから。」
さらに強く、抱きしめられる。
「うん、」
「だから、千都世もどこにもいかないで。」
「うん。いかない。」
静まりかえれば、入口の方にある私たちのかばんから、スマホの振動音が聞こえてくるも。
もうどちらも気に留めなかった。
「はるか」
「……なに」
「大好き」
六神はそれだけ言い残して、私の胸の中で眠ってしまった。
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