第132話

「池駒とのセックスがすっごいよくて」


「ぶふッ」


「なんていうか、それはもうぐずぐずに甘々でね?一希はけっこう自分本位なとこあるけど、池駒はすっごい優しくてさ」


「その考え自体がまゆゆ本位なんだわ」


「地底人はやっぱセックスに愛が足りないんだわ」



ここでどなたかにコメンテーター並みの発言を求めたかった。毒舌を吐くでもよし、同調するのもよし。



なんだか女が男を選ぶ時の究極の答えを聞いてしまったようで、私にはぐうの音もでない。



ああ、でも池駒の言わんとすることが分かった気がする。



池駒って、多分まゆゆのことが好きなんだ。





そんな池駒から、大事件を知らせる内線があったのは、次の日の朝だった。



『物流部の池駒ですけど。』


「あ、実来です。おはよう。」



いつものようにルーティーンを終え、朝礼の真っ最中の出来事だった。



うつつを抜かしていたツケが回ってきたのか、この実来春風、中堅にして初めてとんでもないミスをやらかすこととなる。



『ちょっと確認なんだけど、』


「なに?」


『昨日搬入された柚子皮?確か味八フーズさんからの配送便では冷凍で来てたと思うんだけど。』


「え、うん。冷凍…」


『だよなあ。コンテナがさ、常温なんだわ。これって大丈夫なの?』


「え」


『俺昨日担当じゃなかったからすぐには気づけなかったんだけど。システムの登録では冷凍コンテナになってないから。常温用になっててさ。』



あっあれ、わたし…コンテナの種類って…



『冷凍商品、溶かしちゃったらまずくないか?』

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