第73話

「なんで?!なんでよりにも池駒?!なんで私、池駒とあんな雰囲気になった?!」


「知らんがな。」



ねえ社内恋愛って、そんなにあちこちに落ちてるもんなの?



「おかしくない?!わたし、絶対どうかしてた!!池駒とかおかしくない?!あり得ないよねえ!!」 


「どうかしてたと思ってるのは向こうも一緒じゃない?」


「はあー……ほんとやばい。どうしよ、どんな顔して会えばいいんだろ。。」


「……。」



そっか……



まゆゆと池駒はただの同期で、多分仲良くも悪くもないんだろうけど。



ああ、私と六神はやっぱり無理なんだろう。



結局、セックスも勢いに任せられず、思い留まっちゃうほど無理ってことで。



きっと。



へこむなー……



さっきまで強気の姿勢だった私は、まゆゆのワンナイトラブスクープに意気消沈していた。




「あー腹減った〜!」 



私に話せてスッキリしたのか、早くも冷静さを取り戻したまゆゆが、ピスタチオの丸いシュープリームにようやく手をつけ始めた。



クロワッサン生地のシュープリームをポロポロこぼしながら私を見た。 



「あ、そういえばさ」


「なに?」


「ぱるる、あれ、貰った?」


「え?」


 

その時、突然机のスマホが鳴り始めて――――



秒間隔で画面を見ていた私は、ゆっくりと大きくため息をつく。




「ごめん、電話出てくる。」


알겠습니다アㇽゲッスㇺニダ」 



ラウンジの重いガラスドアを開き、廊下を小走りで、つき当たりまで移動する。



細長い縦長の窓ガラスの前で、一旦停止。自分の情けない姿が透過したように窓に映っている。

   


一瞬瞼を閉じてから、“朋政先輩”と表示された下にある通話ボタンをタップした。

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