第4話 帰り道
部活終わりの帰り道。俺はラルラとネライと合流し、一緒に帰路についていた
「はぁ~…負けた負けた!」
ユラギ先輩には1度も勝てたことがない。そのせいで格上相手へよ負け癖が付いている気がする…
「まあ、そりゃ負けるよね。だってユラギ先輩だよ、全国3位だよ? 仕方なし、仕方なし」
「けど、負けたら悔しいのは相手が誰だとしても変わらないだろ?」
「私、敗北しないので♪」
「いや、魔術表現で普通に負けてただろ…」
魔術表現とは攻撃性の無い魔術を使って、美しさを競う芸術競技で
「ちっちっちっ…あれは私の中の基準点は越えていたから勝っていたのだよ。私の敵は常に自分自身なのだ」
ラルラは指でメガネをクイッとする仕草をして、知的にそう言ってきた。言ってることに一理あるのが逆にウザイ
だがラルラの、自信を持って何事にも挑戦する芯の強さと、その挑戦で身に付けた「気付き」を作品に取り入れるセンスは見習っているし、尊敬もしている
そこでようやく、恋人とメールでやり取りしていやがったもう一人の親友も会話に入ってきた
「「敵は常に自分自身」ね…本当にいつも、言うことだけは達者だよね」
「「うるさいぞ不敗」」
「ははっ、相変わらず生きぴったりだね」
ネライは「魔術射撃」で1年のときなら「公式」「非公式」関係なく全戦無敗を誇っている神童らしい
そう呼ばれるより前からの付き合いだったので仲良くできてるが、本来なら俺には手の届かないような人物なのだ
そして何より、普通に良い奴なのがむかつくのだ。凡人ズは同世代の天才というだけで妬むものなのだ
ほら、俺の相方の凡人が本心を爆発させてる…
「敗北を知らない奴が敗北を語るなやゴラァ! こちとら、後輩のビギナーズラックにビクビクした日々を過ごしてんだぞー」
「僕、別に射撃関連以外なら普通に負けたことあるからね?」
「そうだよね! そうだったね! 普通にゲームでボコった記憶あるもんね!」
「FPSでボコられた記憶もあるけどな」
ネライはFPSが得意で、俺は格ゲーが得意。ラルラは落ち物ゲーが得意と、俺たち仲良し3人組は明確に得意ゲームが異なっているので、大抵1人の圧勝になる
だがしかし、仲の良い友達とのゲームであれば勝ち負け関係なく楽しいものだ。まあ、勝てればさらに楽しいが
そんな風にゲームの話題で盛り上がっていると、ちょうどよくゲームセンターの前を通りかかった
俺がゲーセンの方を指差すと、ラルラは頷いてネライは肯定の笑みを浮かべた
ゲームセンターに入り、とりあえずクレーンゲームの景品に目を通す
可愛らしい巨大な人形。今期や王道のアニメのフィギュア。お菓子やエナドリ。メンツは結構いつも通り
俺はどうやらクレーンゲームが得意らしく、たまに妹にゲームセンターに引っ張られて商品を取らせられたりもしている
今回は目を引くような商品はないのでパス。他の2人も「可愛い」「カッコいい」「面白い」とは言うが、欲しい物はなさそうだ
となると、次に向かうはメダルゲームのエリア…を素通りし、格ゲーの台がならぶエリアへと向かった
「まっ、これだよな」
この台のゲームはロボットを操作して戦う3Dの格闘ゲーム
格闘ゲームなので駆け引きが多く、俺は戦闘経験を活かすことができる
3Dのゲームなので空間情報が多く、ラルラは思考速度を活かすことができる
TPSではあるが銃が使えるので、ネライはエイム力を活かすことができる
このゲームならば、3人とも長所を活かせるので毎回良い勝負になる。それが、毎回楽しくて俺たち3人のお気に入りゲームとなっている
3人横に並んで、それぞれお金を入れる。店内対戦モードを選択して2人のことを待つ
「なんだかんだ、これをやるのも春休み以来だな」
「私もだよー」
「まあ、2人以外とはやることないからね」
「3人等しく腕が鈍っているかもな」
「そんなこと言って。毎回初っぱなから2人とも本調子じゃん」
「まあ、僕やカキネは普段から似たようなことやってるし、僕は銃さえ使えればいいしね」
「俺、感覚的に操作できるタイプ。お前は調子以前に操作方法を忘れているだけだろ」
そう言って隣に座るラルラの方を向くと、予想通り台に備え付けられている操作説明を凝視していた
ラルラが俺の視線に気が付くと「2人がおかしいだけだもん」と言って、俺の肩をポンポンと叩いてきた
「はいはい。早くしろよ~」
頑張って操作方法を思い出しているラルラを待っている間、俺は画面に映っている戦績を眺めていた
KAKINE 48戦11勝37敗
RARURA 34戦10勝24敗
NERAI 42戦21勝21敗
俺は幼馴染みと。ネライは彼女と少しだけプレイしているが、ラルラは俺ら以外の友人とはこのゲームをやったことはないらしいので、俺達3人でのプレイ回数は34回ということになる。勝敗はわからん
「よし理解。お待たせ」
ラルラが準備完了を押して、カウントダウンが始まる。このカウントダウンが「疑似戦闘」と似ているので、集中力を高められる…
「ふぅ…よし」
画面のGOサインで俺たちは一斉にゴチャゴチャと操作を始める
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