ごめんなさい・・・こんな私どうでしょう?

猫の尻尾

第1話:お届けモノです。

例によって俺の名前は・・・から始まる。

俺の名前は「五六 七男ふかぼり ななお」当年とって22歳。

某、大学に通ってる人畜無害ないち男子。


できるだけ安いアパートに一人住まい・・・不動産屋から訳あり物件だけどいい?

って言われたけど、かまわずこのアパートにした。

何が訳ありなんだか、そんなこと言われなくても分かる、だけど俺は霊感なんて

まっくないし、ガキの頃からそれらしいモノも見たことがない。


まあ、いてもいいけどな・・それならそれで男なら親友にでも・・・女なら彼女

にでもなってもらえばいいだけの話だ。


大学が休みのそんな日、注文すらしてないのに俺の部屋に大荷物が届いた

畳一枚くらいありそうな木枠で丈夫に梱包された段ボール。

注文してないんだから、持って帰ってもらおうと思ったら、たしかに注文は

成立してるらしい・・・。

誰か俺の個人情報から嫌がらせでこんなもの送って来たか?


しかたないので俺は受け取りにサインして玄関の上がり端に荷物を置いて

もらった。


「バラしたらまた残材ができるじゃないかよ・・・」


そう思いながらとりあえず木枠をバラしてダンボール箱だけにした。

で梱包テープをはがして段ボール箱を、おもむろに開いてみた。


「うそ・・・およよ・・・なんで人が入ってるんだ?・・・しかも女だし」

「なんで?」


で、よ〜く見た。


「なんだよラブドールか?・・・びっくりしたわ・・・なんで、こんなもの」


プチプチで包まれたラブドールの上に役に立たなそうなちっこいスパナと

六角レンチに取り扱い説明書が乗っかっていた。

「アンドロメダ工業」・・・聞いたことないような会社名。

トリセツはとりあえず細かい文字は流してもいいから重要な部分だけ読んで

おいたほうがいいだろうと思ってページをめくってみた。


下手くそなイラストに小さな文字でいろいろ書かれていた。


「え?ん?なんだよ絵も文字も手書きかよ?・・・普通印刷だろ?」


注意その1:呼吸をしてるように感じますが、よりリアルを感じていただく

ためにそのような装置を体内に内蔵しています。


注意その2:心臓の鼓動が聞こえますが、よりリアルを感じていただくため

体内にそのような装置を体内に内蔵しています。


注意その3:一応関節は可動式になっていますが、とても繊細なので変な

方向に曲げないでください。


注意その4:体温を感じると思いますが、よりリアルを感じていただきくために

体内にヒーターを装備しています。

※加熱する恐れがありますので手荒く扱わないようお願いします。


注意その5:ラブドールをご使用になられる時はコンドームをお使いください。

決して生ではご使用にならないでください。

もし注意事項を守らなかった場合は、あなた自身がのちのち後悔することに

なります。


その場合当社は一切責任を負いません。


では当社のドールを充分お楽しみください。《アンドロメダ工業》


「なんだ、これ・・・」

「呼吸ってなんだよ・・・心臓の鼓動って?・・・」

「最近のラブドードールってそんなにリアルに出来てるのか?」

「ん〜・・・・まあでもいいや・・・最近、金欠で風俗も行ってないし・・・」

「試してみるかな・・・」


誰か知らないけど送って来たんだから、この子はもう俺のもんだろ?

このまま放置するなんて男としてどうなんって思うし、使わないと宝の

持ち腐れだし・・・。


そう思ってラブドールを箱から出そうと抱えてみた。


「重・・・なんでこんなに重いんだよ?」


いろん装置を内蔵してるから重いのか?だけど抱けない重さでもなかった。

ラブドールを必死で頑張って段ボール箱から外に出した。


「お〜可愛いじゃん・・・しかも下着もサービスで履かせてくれてるし」


俺が可愛いじゃんって言ったらラブドール、ちょっと笑った気がした。

な、わけないよな・・・人形なんだから笑うかよ・・・バカバカしい。


で、注意3:に書いてあったとおり関節の動きがめちゃスムーズ。

まるで人間みたいじゃん。


うん、体温もあるし呼吸もしてる・・・胸に耳を当てると心音が聞こえる。

まじリアル・・・そんなだから俺はまじまじとラブドールを見た。

皮膚もプニプニして柔らかいし、よ〜く見たら産毛まで生えてるし・・・。


そしたらなんとラブドールが瞬きしたんだ・・・ラブドールが・・・。


で・・・「クチュン・・・」ってくしゃみまでした?・・・・。


「うそ〜〜〜〜〜!」

「なにやってんのラブドール〜〜〜〜〜のくせに〜一人前に」


で、俺はもう一度よ〜くラブドールの顔を見た・・・・。

化粧なんかしてるから分かりにくかったけど・・・。


「誰か知ってるやつに似てる気がする・・・・・・・・あ!!」

「あ、あ、あ、あ、か、かみしろ・・・神代 絵馬かみしろ えま!!」


そしたらラブドールがパチパチ瞬きした。


起こるはずのない出来事が俺の前で起きていた。


つづく。





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