プレゼント

理由


 父親がいない藤堂家では、長男の翡翠が「父親役」をしている。



 それは金銭的な事から精神的な事まで全てが含まれる。



 藤堂家の長女と次女、そして長女の息子を守る為に、日々頑張る翡翠は、ふとある事を思い付いた。



 毎年クリスマスや個々の誕生日には、それぞれが欲しいと言う物を買い与えている。



 だから本人たちからすればプレゼントに何を貰えるか分かっていて、サプライズという意味での驚きはない。



 たまにはサプライズ的な驚きも必要なのではないか。



 今年のクリスマスはそれにしよう。



 そう思い付いた翡翠だったが、それでも本人たちが欲しいと思う物をやりたいとも思う。



 そこで翡翠は更に思い付いた。



 どうすれば、本人たちの欲しい物をサプライズとして与えられるか。



 ある朝、翡翠は家族に向かってこう言った。



「お前ら、神様から何でも好きな物が貰えるとしたら何を貰うか紙に書いてみろ」



 夏の日の出来事である。



 それは、夏に聞いておけば、皆クリスマスには聞かれた事を忘れ、欲しい物をサプライズ的に貰えていいんじゃないかという翡翠の作戦のもとに実行された。

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