最初で最後の手紙です。

第1話

最後の1ヵ月を過ごしたこの席から、こうして外を眺めるのも今日で最後。


明日からは、もうこの席は私の席ではないし、この景色も他の誰かのものだ。



卒業式の朝、窓の外の桜の木にはつぼみが膨らんでいるのが、見えた。


毎年春になると、薄桃色の花弁を身に纏い、辺りを柔らかくて優しい世界へと誘う。


けれど、気づけば一瞬にして世界は変わる。


潔く衣装を脱ぎ捨て、なんの未練も残さずに散っていく。


私は桜の花が好きだった。


その優しさも、美しさも、潔さも。


どれも、自分が望んで手に入らないものだったから。

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