夢か現か

side:ほたる

第2話


1週間後に夏休みを控えた今日の天気は晴天。


まるで私の心みたいに、弾むように照り付ける陽光。


暑さなんて、全然気にならない。



夢、じゃないよね?



昨日から何度も自分の頬を捻って確認した。


両頬が真っ赤になって、お母さんから「なにしてんの?」って呆れられるくらいに、無様に腫れた頬を、朝からアイスノンで冷やしていたから、今度は頬がヒリヒリ痛い。



でも、でもさ。


頬が痛くなるくらい、腫れることくらい、なんでもない。


それが、昨日の事を現実だって知らしめてくれるなら。


私は何度だって、自らの頬を痛めつけよう。



そんな自虐的になってしまう位、夢みたいなことが現実に起こった。


ずっと、ずっと好きだったヒトから、告白されたんだ。


東条朔弥くん。


彼を初めて見たのは、高校の入学式。


張り出されたクラス分けの紙を右から左へと、自分の名前を探している時だった。


人込みの中を、目一杯背伸びしながら探すのに夢中だった私は、やっと自分の名前を見つけた途端、目の前の紙を指さして「あった!」と声を上げた。


そんな私とハモるように声を上げたのが、彼だったのだ。

短いけれど振り返った時に揺れた黒髪はサラサラで、日に透けるとほんの少しブラウンが覗く。



「……もしかして、同じクラス?」



まさか、見知らぬ相手から話しかけられるとは思わなくて。


一歩引くように彼から距離を取って、声を出さずに頷いた。



「じゃ、1年間よろしく」



私の態度に嫌な顔一つ見せずに、ニカッと白い歯を見せて笑った彼に、やっぱりまともに返すこともできなかった。


でも、彼の笑顔は、その日、緊張と不安で重たくなっていた私の心を一瞬で軽くした。


私の高校生活は、こうして幕を開けたのだ。

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