片想い歴3年目

第1話

✳︎


 「今日も春くん朝一で告られてたよー」

 「こうなると毎朝の恒例行事だな、アイツが女から告白されるの」


 大学卒業後、いくつかの会社の面接を受けて、無事入社できたのは 小売店舗・商品開発と製造・販売を展開する専門小売企業であるこの会社だった。


 研修期間を経て所属となった総務部の一角で、さっきのような会話が聞かれるのがほぼ日課だと感じるようになったのは、この部に配属されて3ヶ月経ったころだったか。


 私、氷川ひかわ雪佳せつか(25歳)の同期であり、会話の話題となっている春くんこと、春織はるおり優斗ゆうとは、イケメン顔だ。


 イケメン顔と言われるのは一般的に、美形即ちイケメンという印象を周囲に与える、顔形や顔のパーツの位置が黄金比率と呼ばれる、人間が無条件に「美しい」と感じる比率で構成された顔のことらしい。


 そんな羨ましい容姿を親から与えられた彼は、その容姿ゆえの宿命か、多くの女性を虜にしてきたようだ。


 多分にもれず、私も一目惚れをした。


 けれど、モテる人は必ずしも自分がモテることに感謝する人ばかりでなく、心底嫌がっている人もいるのだと彼に出会って初めて知ることができた。


 モテる人にはモテる人なりの不満もあったりするのだろう。


 モテない人間の僻みと取られるかもしれないけれど、わたしから見たら勿体ないの一言に尽きるのだけど。


 

 「あ、氷川さん。おはようございます」

 「おはようございます」


 私の席近くで話していた人達は、出勤してきた私に気付いて慌てて場所を開けてくれた。


 別に話をしててもらっても良かったんだけど。荷物さえ置かせて貰えば、すぐに給湯室へ行ってコーヒーを入れてこようと思っていたから。


 

 「すみませんでした。邪魔でしたよね、すぐのきます」

 「別に……」


いいのに……と言い終わる前に彼女達は離れていく。

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