第7話

「あれ……加嶋?」



眠たげな目を擦りながら、チラリ私を視界に留めて彼は私の名前を呟いた。



彼が、私の名前を口にした直後私も彼の名前を思い出した。



甲斐 忍だった。

確か出席番号が前後だったんだ。



「オレ、寝てた?」



尋ねられて頷く。



「うん」



寝息までしっかり聞こえたよ、と言うと彼は「ヤベェ」と笑った。



右頬にできた笑窪とチラリ覗いた右の八重歯。



不覚にもその笑顔に可愛いと呟いてしまった。



ハッとして口元を手で隠したけれど、彼の笑顔は不機嫌に消えた。



「男が可愛いって言われて喜ぶと思ってんの?」



別にそこまで怒らなくてもいいのにと、反論したかったけれど傷付いたように見える彼の目に気圧されて何も言うことはできなかった。



黙ったままの私に彼はチッと舌打ちし、派手な音を立てて立ち上がった。



思わず後退りしてしまう。

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