第6話

「六花さんは、付き合っている人っているんですか?」


 「……は?」


 てっきり彼女の話だと思っていたら、まさかの私?しかも恋人の有無を聞かれるってどういう事なんだろう?


 「えと、モカちゃん。話って……」


 「六花さんの返答次第で、私がこれから相談できるかどうかが決まるんです」


 真剣な表情のまま彼女の勢いに、答えなんて一つしかないのに思わず躊躇ってしまう。


 「……いない、けど?」


 確かに今わたしには付き合っている人はいない。


もっと詳しくいうなら、仕事を始めてからはただの一度も男性とお付き合いというものはしていない。


彼氏という存在の有無を聞かれてYESと答えられたのは、遥か昔の高校時代にまで遡らなくてはならない。


 つまりは……いや、そこまで述べる必要はないはずだ。


 「じゃあ、好きな人は?」


 えー、なんなの。なんの相談なの?

 モカちゃんの前のめりな問い掛けにちょっと引いてしまう。


 これから話し始めるであろうモカちゃんの相談ごとと私の恋愛遍歴になんの関係が?


 「いないよ。好きな人も、付き合っている人も。てか、なんなのこれ」


 「なんだよ、篠原。お前好きなやつもいないって、寂しいやつだな」


 真後ろから降ってきた声に、ムカついて振り向くと同時にカウンターに座っていた岬がパッと軽い身のこなしで私の隣の席に腰掛けた。

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