7話 ペア分け

沙也加ちゃんが転校してからしばらくたち、夏が近づいてきた。

沙也加ちゃんとは今ではすっかり仲良くなり、学校と沙也加ちゃんママのお願いが終わった後も俺たちは4人で行動するようになっていた。


一応沙也加ちゃんには俺と舞依と萌花の関係性については伝えてあるので、一緒に遊ぶときはキスはしないが手を繋いだりはしていた。


・・・まぁ、見えないところではキスとか色々してるんだけどね。


流石に沙也加ちゃんに見せるのは悪いってことで、そこは配慮している。

単純に恥ずかしいのもあるけど。



そして今日は、沙也加ちゃんが参加する初の子供会の日。

俺たちは暗い夜道を歩いて子供会が行われる集会場に集まっていた。


・・・何故こんな暗い中集まったのか。


それは・・・夏と言えば祭り。

俺たちは毎年地区で開催される夏祭りの準備のために集まっていた。


「おっす」


「こんばんわー」


適当に挨拶をして集会場に入る。

中では、俺たちが普段使用する畳の敷かれた部屋にいくつかの和太鼓が置かれていた。

・・・そう、俺たちの地区では祭りの時に中心に建てられたやぐらの上で子供たちが太鼓の演奏をするのだ。服装も青の法被に赤と白のねじり鉢巻きを付けるので結構本格的な祭りになっている。


「この太鼓を叩くのか」


目の前にはザ・和太鼓の見た目をしたどでかい太鼓が鎮座していた。

太鼓なんて普段間近で目にする機会があまりないが・・・・・長年使いこまれてきた太鼓達は、独特な色味を放っていてとても魅力的に感じた。


「――一緒のペアになれるといいなー!」


「――萌花がひろ君とペアになる!」


「あ、2人とも!うん、その時はよろしくね!」


いつの間にか舞依と萌花が合流していつもの3人が揃う。


2人の言うように祭りではペアで太鼓を演奏する。

ペアになれば練習を含めて一緒にいれる時間が増えるので、仲を深める良い機会だったりもする。


前世では確か・・・舞依、萌花、他の女子、と全員女子が相手だった気がする。少なくとも舞依と萌花とはペアになったことがあるので楽しみだ。



「みんなっ!」


「沙也加ちゃんこっちこっちー!!」


しばらくして、沙也加ちゃんがやって来た。

妹と一緒に来たみたいで隣には沙也加ちゃんを少し幼くした女の子がいた。


「こっちは妹の姫花!ほら、挨拶して!」


「姫花です!よろしくね!」


「よろしく姫花ちゃん!」


「よろしくねー!」


「よろしく」


妹の姫花ちゃん。2つ下の小学3年生だそうだ。

沙也加ちゃんに妹がいるのは知っていたが、話すのは今日が初めてになる。

学校には沙也加ちゃんママが車で送り迎えしているので、会う機会がなかなか無かった。


姫花ちゃんは沙也加ちゃんに似て元気で可愛らしい子だった。



「姫花ちゃん、学校で友達できた?」


「うん!今度一緒にお絵描きするんだ!」


「そっか、それはいいね! 良かったら今度見せてほしいな!」


「いいよー!」



ニコニコと笑う姫花ちゃん。

話していてこちらも自然と笑顔になっていた。


この様子なら友達が出来るどころか人気者かもしれない。

天真爛漫でいい子だなぁ。


時間になるまでは、普段話す機会の少ない沙也加ちゃんや他の子たちと他愛のない話で交流を深めていった。


そして、5分ほど経ち全員揃ったところで、会長のおじいさんが話し始めた。


「よーし揃ったなー。んじゃ今日から夏祭りに向けて和太鼓の練習をしてもらう・・・ペアは決めてあるので発表していくぞー」


この地区の小学生は約20名ほどと他に比べて少し多く、男女比は少し女子が多いくらい。その全員がこれから始まるひと夏の思い出に興奮を隠しきれないでいた。


何故なら、毎年この行事で仲良くなる男女が出てくるのが通例であり、夏祭り後にあるお泊り会も含めると・・・・・総じて思春期の特に高学年はそわそわしていたりする。



「まずは―――――」


おじいさんが紙に書かれたペアを読み上げていく。


「――これからよろしくね!」「よろしく!」


「――どっちが上手く叩けるか勝負だ!」「負けないよ!」



読み上げられた組み分けに一喜一憂する子供達。

既にペア同士でやんややんやしているところもあった。


こういう雰囲気っていいよなぁ・・・


楽しそうにする子供達を見ると改めて平和を実感する。

・・・ちょっと爺臭すぎるか?俺。


だが、出来れば2度とあのような人生を送りたくない。

最近はストレスフリーどころか幸せな生活が送れているので、これからもそうなるように願うだけでなく積極的に行動していきたいな。



そんな中、読み上げ対象が下級生から上級生に移ると、ついに俺の番がやってきた。


――舞依か萌花がいいな・・・あ、沙也加ちゃんもいるんだよな。なら、ぜひともこの3人の中からお願いします! ・・・・いやまぁ、ぶっちゃけ男子じゃなければ誰でもいいんだけどさ(クズ)。


そんな煩悩にまみれたことを考えていると――


「裕哉君は―――えっと・・・・沙也加ちゃんだね。引っ越してきて初めてで不安なことも多いと思うから、しっかり頼んだよ」


「あ、はい!頑張ります!沙也加ちゃん、よろしくね!」


「う、うん!よろしくねっ、裕哉君!」



どうやら沙也加ちゃんとペアになったようだった。




★★★

あとがき


つ、ついに沙也加ちゃんが・・・・・!?!?!?!

乞うご期待!




読了感謝です!

もしよければ☆☆☆をくれたら作者が喜びます!

また、コメント等もモチベーションが上がります!


今後ともよろしくお願いします!

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