25話 沙也加の家で2人っきり



「いらっしゃい裕哉っ!」


「よっす沙也加」


皆で王様ゲームをした日から少し経った休日の今日。

俺は1人沙也加の家に来ていた。


沙也加の家は普通の一軒家で、何気に家の前まで来たことはあるが入るのは初めてだった。


そしてさらに言えば今日は俺と沙也加の2人だけ。

本来ならここに舞依と萌花を加えた4人の予定だったんだけど、急に二人の都合が悪くなってしまい、じゃあ遊ぶのはまた今度か?となると思いきや、たまには2人で遊ぼっ!と誘われたのでこうしてお邪魔している。



沙也加の匂いだな、といつもの癖で家の匂いを堪能しつつ、沙也加の案内に従って彼女の自室へと移動する。


部屋の中は、一言で言えば一面ピンクでぬいぐるみがある女の子らしい部屋という印象だった。


「お菓子と飲み物持ってくるから、少し待っててねっ!」


「うん、ありがと」


そう言って沙也加が部屋を出ていった。


俺は舞依や萌花に悪いと思いながらも、こうして女子の家それも自室に招待されたことに興奮していた。前世ではこんなことは起こりえなかったから。



「すぅーーー やべぇ・・めっちゃ良い匂いする」


俺以外に誰もいない部屋。

ダメとはわかっているがつい部屋の匂いを堪能してしまった。

美少女の・・・・沙也加の匂い・・・・


完璧に整頓されているわけでない生活感を感じる具合なのが余計に魅力的だった。



そういえば舞依と萌花の部屋に行ったこともあったけど、その時もバレないように嗅いでたな・・・・何故女の子の部屋はこんなにも男心をくすぐるのだろう。それとも俺が異常なだけか?


・・・前世の後遺症、か。前世は女子と関わる機会が全くなかったから、たまに女子とすれ違うと匂いを嗅いでしまうことがあった。


キモイからやめようと思ってもつい抗えずにやってしまうんだよな。

・・・わかってくれる人いる?


そしてそんな匂いフェチの俺の前の前には――


「・・・・・」


沙也加が使っているベットがあった。

ピンク色の毛布にフワフワしてそうな汚れのない枕。



「・・・・」


耳を澄ませて周囲の気配を探る俺。

しかし、誰も近くにいる様子はなく、カメラらしいものもなかった。


「・・・1回だけだから」


そう呟いてそろりと立ち上がる俺。

足はベッドの正面へ動いていた。


目の前には同級生の可愛い女子のベッド。

俺にはそれが光輝いた宝石のように見えた。



「・・・・・・・ぐっ!さすがに犯罪はダメだ・・・!!」



手を伸ばしそれに触れようとしたが、ギリギリで理性が上回る。

沙也加は俺を信頼してこの部屋に呼んでくれたんだ・・・・それを自分勝手な欲望で汚してしまえば一生後悔する。



「・・・そもそも俺には舞依と萌花が居てだな・・・最近調子に乗りすぎだろ俺・・・」



そうだ。そもそも俺は舞依と萌花がいるだけで幸せなのだ。

そして沙也加や里緒奈がいる今の状況以上に何を望むというのか。


せっかく叶ったやり直しを、自分勝手な行動で壊すのはバカすぎる。

欲求が抑えられないなら、それこそ彼女である舞依と萌花に相談すればいいんだよな。


ならそもそも恋人いるのに他の女の子と2人っきりで遊ぶなよって話だけど・・・すまん、美少女に誘われたら男には断れないんだ。


それに何か沙也加の様子が少し変だったから心配だったし。


――すいません半分はエッなこと期待してましたごめんなさい。



理性によりとどまった俺は、再び元に場所に座る。

そしてしばらくして、沙也加が戻ってきた。



「――お、遅くなってごめんねっ!」


「いや全然大丈夫だよ」


少しぎこちない様子の沙也加。

沙也加が持つお盆には、2人分のクッキーと麦茶が乗せてあった。


「じゃ、じゃあさっそく食べよっ!」


「いただきます!」


まあ食べ終わってから愚痴でも聞くか。


考えをそう割り切って、面前のクッキーを一枚掴んで口の中に運ぶ。

噛むとサクサクとした触感にバターの香りが広がって・・・・めっちゃ美味かった。


「これ美味しい・・・」


「よかった!これは、お母さんが裕哉にいつもお世話になっているからって買ってきてくれたんだ!」


マジか。

ありがとう沙也加ママ。


「そんなわざわざ・・・・・”ごちそうさまでした。おいしかったです。”ってお礼お願いしてもいい?」


「もちろん!あ、良かったら私のも食べる??」


「えっ、いいの?」


「うん!どーぞ!」


俺があまりに美味しそうに食べるからか、自分の分を譲る沙也加。

今度お礼を持って来よう。そう決めて、遠慮なくクッキーを貰った。


2人分のクッキーを貪り、渇き切ったのどを潤すため麦茶を飲み干した。



「――それで姫花が――」


「へぇ――もしかしてそれって――」


「――休み時間に――」


「――はは!それは大変だったね!」


「――肝試しは本当に――」


「――あの時は俺も――」



食べた後は、妹である姫花ちゃんのこと、学校でのこと、夏休みの思い出、と色々話した。話題には困らなかった。


というのも、実は俺と沙也加の話す機会はそんなに多くなかったからだ。

それは、クラスが違うのに加えて、沙也加と話すときは舞依や萌花たちがいることが多いので、みんなの共通の話題が多くなる。なので、沙也加と沙也加ママや姫花ちゃんとの普段の様子などが知れる良い機会になった。



だが、たくさんお菓子を食べたせいか眠気が襲って来た。

しかも結構強いのが。



「――・・・ごめん、ちょっと眠くなってきたかも・・・」


「――あ、そうなんだっ!家まで大丈夫そう??」


「・・・え、あーうん、大丈夫だ、と・・・おも・・・う」


「ひ、裕哉っ?おーい?・・・・・・寝ちゃったか」


俺の意識はここで途絶えた。


「・・・・・・」


「・・・・えへへ・・・・裕哉寝ちゃった・・・」



――何かが頬に触れた気がした。






★★★

あとがき


匂いフェチの暴走を理性で抑えた裕哉グッチョブ。

なお沙也加さん()



一体、これから何が始まるんだ・・・?!





読了感謝です!

もしよければ☆☆☆をくれたら作者が喜びます!

また、コメント等もモチベーションが上がります!


今後ともよろしくお願いします!






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