秋色の疾風

第1話

見上げれば雲一つない青空。


照りつける日差しは夏の名残を留めるけれど、ふわっと吹き抜ける風は柔らかく肌を撫でる。


グラウンドを囲む桜の樹々が葉を黄金色へと染め出すのを見れば、季節はもう秋と言ってもいいんだろう。


秋晴れ。


きっとこんな日に使う言葉。


こんな日はもっと優雅で優しい気持ちで過ごす事が、きっと似合う。


……そう思うけれど。



「田端!ボケっとしてんなよっ、次の競技始まんぞ!」


怒声が耳を劈く。


「分かっとるよ!」


相手のテンションに引き摺られるように不機嫌に返してしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る