第10話

「雛、どうする?どっか行きたいところある?」



次の日の朝、教室に入った途端。



サッカー部の朝練で先に来ていた成くんが私の机のところまで来て言った。



「どこか?」



成くんと行きたいところならたくさんあるよ。



遊園地・映画館・この時期ならスケート場もオープンしてる。



「どこでもいいよ?雛の行きたいところに行こう」



成くんは優しい。



いつも私の気持ちを優先してくれる。



行きたいところ。したいこと。食べたい物。欲しいもの。



いつも、私ばっかりを嬉しくしてくれる。




でも。



でもね?



今度の記念日は、ふたりのものだよ?




だから、私は成くんにも楽しいって、嬉しいって思って欲しいんだよ。




「成くんは?」



「え?」



成くんの少し意外そうな声。



「いつも、私にばかり聞いてくれるから、たまには成くんの行きたいところとか、したいこととか、聞きたい」



「行きたいところ?したいこと?」



そう呟くと、目の前で腕を組んで真剣に悩み始めてしまった。

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