第6話

「い、いやです。なぜ……? 世継ぎを残すためなら、陛下は側妃を迎えればいいではありませんか。私はクリストフ様と結婚したのです。他の男性となんて……しかも……」


 ましてやその父君だ、と喉まで出かかったのは、何とか堪えた。


「ふ、まだ気が付いていないかもしれないが、クリストフは心の成長もゆっくりなのだよ。そもそも、性行為でどういうことをするのかを分かっていない。それにわが妃は、死してもリリアーナただ一人だけだ。側妃など娶るつもりはない、だが……」


 ランヴァルトはリーゼロッテをゆっくりとその身体の下に組み敷いた。

 女性的なクリストフとは違う、生々しい男の体躯からその熱が伝わってくる。筋肉の盛り上がった逞しい太腿がリーゼロッテのほっそりした脚に重なり、心臓がどくりと鳴る。

 見下ろされた宵闇の瞳の奥には、欲望の熾火がちらちらと揺れていた。


「可愛いリーゼロッテ。そなたは、本当にリリアーナに瓜二つだ。私もそなたを見るまでは、乗り気ではなかった。だが、気が変わった。それに子を残しておかねば、万が一、私が命を落とした後、リリアーナの忘れ形見であるクリストフを守るものがいなくなってしまう。彼を守ることが、亡きリリアーナとの約束なのだ。だから、耐えよ。私と肌を重ねるのは、そう悪いものではないはずだ」


「ああっ……」


 ランヴァルトの逞しい手がリーゼロッテの寝間着をいとも簡単に引き剥ぎ、露になった真白の乳房を包み込んだ。  


 柔らかさを確かめるように揉みしだき、ざらついた唇がその頂を吸い上げる。

 王が前妃を求めるかのごとく、肌に沁みわたる甘い毒のような感覚に、リーゼロッテは抗うことが出来なかった。

 両脚の間から湿り気が溢れ出してくる。ランヴァルトは舌でリーゼロッテの身体中の窪みや突起をねぶり、太腿を割り開く。


「やぁっ、何をするのっ」

「リリィはこれが好きだった。そなたも好きになるだろう」


 吐息があられもない場所に吹きかかる。大きな指の腹で花襞を剥かれ、ぬめりを帯びた熱いものがねっとりと押しあてられた。

 ランヴァルトの舌が狂おしい程の快楽を生み出し、リーゼロッテを愛欲という禁断の沼に沈めて行く。

 逞しい男の逸物に貫かれたその瞬間、リーゼロッテの全身がびりびりと稲妻に打たれたかのように戦慄いた。


「……んあぁっ」


 ──その夜。

 荒々しい男の吐息と寝台の軋み、啜り泣きのような甘い声が、明け方まで王の寝室から漏れ響いていた。

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